#624 『子供の声が聞こえる一画』
筆者の家の近くに、小規模なスーパーマーケットがある。これはその店にまつわる噂話。
店舗へと踏み込むと、僅かばかりの空間を経てすぐに食料品売り場となっているのだが、入ってすぐ左手には廊下に面した小さな商店がいくつか並んでいる。クリーニング店や小物雑貨、鍵屋さん等だ。
そしてその廊下には子供向けのガチャポンの台がいくつか置かれているのだが、不思議とその一画で子供の声がする時があると言う。
その周辺の商店の人は、誰しもがそれを聞いたらしい。実際、ガチャポン目当てで来る子供の多くは、突然「誰?」と声を上げ、周囲を見回す仕草をする。確かに「何か」を聞いているのだ。
一度は、転がったガチャポンの空き容器が、まるで誰かに蹴られたかのように勢い良く転がって、壁にぶつかって跳ね返ったのを、商店の方達が見たと言う。
実際私もその場所へと行ってみた。だが残念な事に私には何も聞こえなかった。
帰り、買い物をして帰った。暇そうにしているレジ打ちの女性二人が、例の場所の方向を眺めながら、おしゃべりをしているのが耳に入る。
「やっぱり誰かいるよねぇ」
――やっぱり誰かいるのである。
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