#585 『つまんねぇな』
ある日を境に、我が家で奇妙な事が起きるようになった。
それは居間のテレビが勝手に点く事。家には各部屋にテレビを置いているのだが、何故か勝手に電源が入るのは、居間にある大型テレビだけ。
その事を知り合いに話した所、お前の家は街道沿いに面しているからそう言う事もあるだろうと言う話だった。なんでも違法の無線を搭載した車がそこを通過すれば、その電波を拾った電子機器が誤動作を起こして勝手に動き出すと言う事象はあるのだと言う。
だが、それで納得出来る話でも無い。家に帰れば既に電源が入っていたり、見ていると勝手にチャンネルが変わったり、音声が一人でに大きくなったり小さくなったりと、困った事ばかりだからだ。
その中でも一番困るのが、真夜中に階下から大音量のテレビ音声が聞こえて来る事である。
深夜、突然に床が震える程の爆音が聞こえて来て、何事だと思って見に行けば案の定テレビの音声だったりする事がある。
「困ったなぁ」と電源を切るも、再び布団で横になればもう一度電源が入る。その度に私は外の道路を睨み付け、ゆっくり寝かせろよと違法無線を積んだ車の事を思い出しては悪態を吐くばかり。
「……ってな事があってさぁ、困ってんだよ」と、ある日私は会社でその事を話した。すると同僚の中の一人が、「それはおかしい」と言うのである。
電波のせいでテレビのオン、オフが起こるのは良くある現象らしいが、チャンネルが変わるとか音量が変わるのは原因が違うのではと言う事。しかも他の部屋のテレビに影響していないのはどう考えても変なのだと言う。
そんなものなのかなぁと考えていると、その日の深夜にまた、階下でテレビの音がする。見に行けば真っ暗な部屋の中で、下らないバラエティ番組が流れていた。
どうしようかと悩んでいると、目の前でふとチャンネルが変わるではないか。しかもその変わり方は一定の時間を持っており、どう考えても外を通る車のせいでは無さそうに思える。
フッ、フッ――と、次々にチャンネルが切り替わり、やがてプツッと電源が落ちる。
再び真っ暗になった部屋の中で、小さく男の声で、「今日はつまんねぇな」とボヤく声が聞こえた。
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