#386 『消したかしら?』

 朝、家を出たついでにマンションのゴミ集積所に、燃えるゴミを持って行った。

 そうしてゴミを置いた瞬間に思い出す。昨夜の残りのカレーに、火を入れた事を。

「ガス、消したかしら?」と不安になって、部屋まで取って返す。

 ドアを開け、急いで廊下を走ってキッチンへと向かう。そして私はその場で膝から崩れ落ち、悲鳴を上げた。今まさに、キッチンの天井部分にある四角窓の点検口に、ずるずると人の下半身が消えて行く瞬間だったからだ。

 それは水色のワンピースのようで、裾からは女性のものらしき白い足が二本、覗いている。

 足が引っ込むと、蓋がバタンと閉じられる。私は声にならない声で警察へと連絡し、事の次第を伝えた。

 警察官はすぐに来てくれた。そして脚立を使って天井の羽目板を外すが、そこは配管ばかりで、人が入るどころか男性の顔の半分がようやく入り込める程度のスペースしか無かったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る