#363 『霊感チェック・参』

 友人の家での事。面白いテストがあるからやってみないかと誘われ、友人三人でそれを試してみた。

「まずは目を瞑って想像してみてください。あなたは今、家の玄関の前にいます」

 言われた通りに想像をしてみたが、何故か私の脳は、見知らぬ古びた家の前を映し出す。

「では、玄関を開けて中へと入ってみてください」

 いや待って、ここは私の家じゃない。言いそびれたまま、私は勝手にその家の扉を開ける。すると薄暗い家の中、“誰か”が二人、座ってこちらを見ているのだ。

「嫌だ!」と、私は金切り声をあげ、そこで目を開けてしまった。そしてその後、友人に食って掛かった。一体これ、なんの遊びだよと。

 全てを聞いた上で、納得の行かないまま家に帰った。すると珍しく、母が留守にして、父が一人だけでリビングにいるのだ。

 私はなんとなくだが、父に先程の事を打ち明けた。すると父は、「それって実家の事じゃないかなぁ」と呟くのだ。

 かつては私も二度ほど、その家には行った事があると言う。実家は東北のかなり北の方で、そうそう行ける距離では無い為、今では疎遠となっているらしいのだ。

「久し振りに行ってみるか。じいちゃんばあちゃんも、お前に会いたがってるしな」

 そう言って、その週末には家族三人で新幹線に乗っていた。

 そうして辿り着いた先は、まさに私の記憶にあった通りの家だった。どうしてここが私の脳裏で鮮明に映し出されたのか、疑問しか無かった。

 玄関の戸を開けると、父の両親らしい老夫婦が出迎えてくれた。そしてその祖父母は私の顔を見るなり、「あんれ、この前ここに来たのはお前だったかい」と言うのである。

 ある日の夕方、突然、玄関の戸が開かれた。見れば若い子がそこに立って、こちらを見ていたのだと言う。

 そしてその後、その子は突然、「嫌だ!」と叫んで、逃げて行ったらしい。

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