#362 『霊感チェック・弐』

 大学での事。友人のTに、聞いて知ったばかりの霊感チェックと言うものを試してみた。

「目を瞑ってー。ハイ、じゃあ今お前は、家の玄関の前に立っている」

「立ってねぇよ、椅子座ってるわ」

「そうじゃなくて、想像するんだよ、想像」

 そんな騒がしいやりとりをした後、「では玄関から入って、家中の窓を開けて来て」と言うと、「知っての通り、一部屋しかねぇよ」とTは笑う。それは確かにその通りで、Tは今時珍しい、風呂無しのトイレ共同な汚いアパートに住んでいるのだ。

「分かった分かった、玄関開ければいいんだな」と、Tは目を瞑りながら言う。そしてその後――Tの顔が苦悶の表情となった。

「なんだよ、どうした?」聞けばTは、「いや……」とだけ答え、「ちょっとなんかこれ、気味悪いからやめるわ」と言い出すのだ。

 一体そこで何を見たのか、Tはなかなか教えてくれなかったのだが、夕方、安酒場でレモンサワーを二杯空けた辺りでようやく口を割った。

「なんか部屋に三人いた」

 それ、どんなだよと聞けば、「一人は子供で、天井からぶら下がって首吊ってた」と言う。

 そして後の二人は夫婦のようで、その子供がぶら下がる真下で飯を食っていたと言うのである。

「そんであれ、なんのテストよ?」

 聞かれて俺は、正直に答える事が出来なかった。

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