#361 『霊感チェック・壱』
女子校時代の頃のお話し。ある時、学校で妙な遊びが流行った。
それは“霊感チェックテスト”と呼ばれるもので、それをする事によって霊感のある無しが分かる上、自宅に棲み着く悪霊の存在も明らかになると言うものだった。
最初、私自身もそれが何のテストなのかは知らされていなかった。ただ、友人のAの言葉に従い、私を含めた友人四人が同時にそれを受けた。
「ハイ、では今、皆さんは自宅の玄関におります」と、Aは語る。私達四人は円を作って座り、目をつむったままそれを聞いている。
テストは簡単なものだった。単に自分の想像の中だけで、自宅の中を回って全ての窓を開け、そして閉めて戻って来ると言うだけのもの。但し――
「家の中で誰かと逢いましたか?」と聞かれ、「逢った」と答えた友人が二人いた。
「それは家族ですか?」と言う問いに、一人は「母だった」と答え、もう一人は「家族じゃない」と答えた。
その子には、更に質問が続いた。「知ってる人ですか?」と聞かれ、「うん」と、彼女は答える。結果、「それは生き霊ですね」と言われ、皆が顔を強張らせて小さな悲鳴を上げた。
帰り道、その生き霊と逢ったと答えた彼女――明恵は、私に「怖かったね」と話し掛けて来た。
「そうだね」とは答えたものの、私の思考が見透かされているような気がして、正直不安だった。
実は私も家の中で遭遇していた。しかもそれは、今、私の横を歩いている明恵そのものだった。
私は想像の中で、自宅の前には立たなかった。代わりに明恵の家の前に立った。
つい先程、その玄関から明恵が家の中へと入って行く姿が見えた。私は少し間を置いて、彼女の後を追った。
明恵はAの言った通りに、家中の窓を開けて行った。私は物陰に隠れ、ずっとその一部始終を見ていた。
やがて窓は開け終わり、明恵は自分の部屋から順番に窓を閉めて回っていた。
途中、廊下で明恵とすれ違った。明恵は心底驚いたような顔をして私を見ていた。私はそれが可笑しくて、つい笑ってしまった。
「――ハイ、目を開けてください。さて、家の中で誰かと逢いましたか?」と、Aが聞いた。私は咄嗟に、「いいえ」と答えた。
「ねぇ明恵、今日、家に遊びに行っていい?」
少しだけ迷った顔をした後、明恵は「いいよ」と答える。私はそれが可笑しくて、つい笑ってしまった。
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