#348 『真夜中のサイレン』
それが何時頃の事なのかは知らない。だが、遠くに聞こえる救急車のサイレンの音に目が覚めた。
深夜、寝静まった時刻に聞く救急の音は不気味だと思いながら目を瞑るが、そのサイレン音はどんどん近付いて来て、結局は私の住むマンションの真ん前で停車した様子だった。
敷地内のどこかで、けたたましい騒動があるのだろうと想像しながら寝返りを打てば、玄関のチャイムが鳴り響く。私はのろのろと腰を上げて玄関へと向かい、スコープを覗けば、想像した通りに救急隊員の姿がそこにあった。
「部屋をお間違えでは?」とドアを開けると、隊員の一人が、「もう一階上だ」と廊下の天井を指差し、「申し訳ありません」と隊員達は取って返した。
ひどい夜もあるもんだと、再び布団へと向かえば、横になったタイミングで寝室のドアががちゃりと開く。
「そんじゃあ俺ぁ先行くからなぁ。後は頼んだぁ」と、老人男性の声。私はそれに向かって、「部屋を間違えてませんか?」と軽く怒鳴る。
少しして、外で叫ぶ女性の声と、子供の泣き声。それに続いてどこかで吠える犬の雄叫びが聞こえて来る。
こりゃあ今夜は眠れないなと思いつつ、布団を頭まで被る。
一人暮らしは何かと物騒で敵わない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます