#149 『呼ばれる人・七代の祟り』

 高校時代からの付き合いである友人のK子には、特別な能力がある。

 それは神や仏の声が聞こえると言う類いのものらしいのだが、時には生きている人の声まで聞こえるらしい。

 友人達と車で熱海まで旅行へと行った時の事だ。突然、「停めてくれる?」とK子は叫び、飛び出すようにして高台にある小さな家へと駆けて行った。私達も慌ててそれに付いて行ったのだが、K子は迷いもせずに大きな石を拾い上げ、その高台にある家の窓目掛けて投げつけた。

 私達はさすがに驚き、K子の奇行を責めたものだが、おかげでその家で起こる筈だった自死を未然に食い止める事が出来た。どうやらその家は別荘だったらしく、夫と別れた奥さんがその別荘へとやって来て、睡眠剤の多量摂取を試みていたらしい。

 また、別の生きた人間に呼ばれた事もあった。K子がいきなり北海道へと行くと言い出し、即日、それは決行された。そして三日後、無事に彼女は帰って来たのだが、驚く事に現地で知り合った男性同伴で帰って来たのだ。

 友人達は皆びっくりした。K子にも彼氏が出来るのか。むしろ男性に興味とかあったのかと、かなり失礼な事まで言い出す者もいたぐらいだった。

 実際、私もそれには少なからず驚き、落胆していた。正直その彼と言うのがどうにも冴えないタイプで、K子にはもっと素敵な人と付き合って欲しいと言う願いもあったからだ。

 だが、その彼氏は半年も待たずに急逝する。自動車事故に巻き込まれての即死だったらしい。一緒に同居していたK子は悲しむだろうと予想していたが、どうにも彼女は至って平気で、とても冷静に彼の葬儀をあげて弔っていた。

 告別式の夜、K子に呼ばれて私達は一緒に食事をした。そこでK子が語った真実はさらに驚くべきもので、「彼は祟られていたからね」と言う内容。何でも彼は大昔、“七代まで祟る”と言う呪いを掛けられており、我が子孫にそんな祟りがあっては気の毒だと、自身の身だけに呪いが来るよう操作をしたらしい。

「さっきので四回目だから、後三回、祟りで亡くなる予定らしいのよね」とK子は笑う。

 何でもその彼氏は、日本人ならば誰でも知っている有名な戦国武将だったらしい。

 後日、私はその武将が眠るとされている墓に、K子と一緒に参拝をした。

 墓に向かって手を合わせながら、「死ぬのを見届けて欲しいと、北海道まで呼びつける彼氏ってのも、なかなかいないよね」と、K子は笑う。

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