#128 『遺影』

 毎日同じ夢を見る。僕の遺影が仏間に飾られている夢だ。

 あまりにも長く続くので、実際に仏間へと行って、夢で僕の遺影があった場所を確認したりもしたのだが、何故か妙に不自然にそのスペースだけ空いている。

 ある日、学校にて生徒手帳の更新の為、証明写真を撮って来いと言われた。近所のスーパーマーケットの横に置いてある機械で写真を撮ったのだが、出て来た写真を見て驚愕した。そこに写っている僕の表情が、まさに夢に出て来る遺影の写真そのものだったからだ。

“死に近付いている”と言う確信があった。僕は急いで近くの本屋へと向かい、今まで手に取った事もない夢診断系の本をめくった。するとどの本を見ても自身の遺影が出て来る夢は吉兆と出ている。それでも安心出来なかった僕は、スピリチュアル系の本で見た事を実践しようと、誕生石を身に付け、持ち歩く事にした。

 それは功を奏したか、僕の遺影は夢に出て来なくなった。代わりに僕の遺影があった場所には、全く知らない人の遺影が飾られていた。それは頬骨がやけに出っ張った、元気の無さそうな表情の中年男性だった。

 三日後、街中でその中年男性とそっくりな人を見掛けた。一瞬でその人だと分かるぐらいのそっくりさ加減だった。僕は慌ててその人に追い付き、顔を覗き込む。すると向こうも僕に気付いて、同じような驚きの表情を浮かべる。

「あの……これ」と、何故か僕は、思わず身に付けていた誕生石をその人に差し出していた。するとその男性は、「あっ」とだけ声を発し、それを受け取った。

「ありがとうございます」言ってその男性は立ち去る。この話はそれで終わりだが、今以てあの一連の出来事が何だったのか分からない。

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