#103 『報道関係者・顔の無い死体』
報道関係の仕事をしている。常にカメラを持ち歩き、カメラマンと同時にライターもこなす、なかなかハードな仕事だ。
一度、物凄く陰惨な殺人現場に呼ばれた事がある。殺されたのは若い女性なのだが、遺体には顔面が無かった。殺された後に顔を剥がされ、削られ、えぐられて、顔面だけがクレーターのようになっていたのだ。
本当は御法度なのだが、その顔を写真に撮らせてもらった。その晩、そのご遺体の人そのものだろう幽霊が家に出た。なにしろその幽霊自体、顔が無いのだ。すぐに本人だと分かった。
こんな失礼な仕事していたらさすがに呪われるよなぁと思いつつ手を合わせていると、その幽霊はふと手を上げ、部屋の一角を指さす。見ればそれはトイレの方向で、そちらに一体何が? と思った瞬間には、幽霊は消え失せていた。
結局、その幽霊は三日三晩ウチに出た。出ればかならずどこかを指さすのだが、それはいつも違う方向なので埒があかない。
「顔が無いから指してる方向もわかんねぇんじゃねぇか?」と、先輩記者は笑う。
「口も無いからしゃべれませんもんね」と、私も一緒になって笑うと、「もしかして」と、先輩は腰を上げた。
先輩にうながされ先日の事件現場へと向かう。鑑識や警察の連中はまだそこにいた。
先輩は勝手知ったる要領で、「上がらせてくれ」と現場に踏み込むと、リビングのテレビドアフォンの前に立った。それは最新型のものなのか、テレビ通話機能の他に、録画機能までが付いている。
再生を押せば、薄気味悪い笑みを浮かべた中年女性が玄関前に立って、宅配便を受け取ってるので出て来て欲しいと訴えている映像だった。
それからすぐに、隣に住む女性が容疑者として身柄を拘束される。幽霊の仕草は、指をさしているのではなく、ドアフォンのボタンを押している姿だったらしい。
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