#101 『仮面』
国内、海外問わず、仮面の収集をしている。
たまに、いわくつきの仮面を持ち込んでしまう事があり、その都度家でなにかしらの怪異が起こるのだが、それはまた別の機会に。
私のその仮面コレクションには、一つだけとても残念なものが混じっている。それはメキシコで購入したもので、仮面の右上、目の部分も含んだ全体の三分の一ぐらいが欠けて無くなっていると言う、そんな仮面だ。
見た目に、おそらくはスペインかその周辺の国で作られたものだろう、青い天然石を薄く切り、その仮面の表面にあしらっているとても美しいものだったが、割れてしまっていて完全ではないのだ。これが割れておらず完璧な状態であったのなら、自身のコレクションの中でもトップクラスで良いものだった筈。それが余計に、私には悔しかった。
ある日、仕事で香港へと出張する事となった。現地で一仕事を終え、その晩はホテルに泊まり、翌朝の飛行機で日本へと帰る予定だった。
夕食を食おうと尖沙咀の街の路地をぶらぶらと歩いていると、何やら怪しげな露天商が建ち並ぶ通りへと出た。買え買えとうるさい商人の前を早足で通り過ぎ、もうすぐ抜けようとした時だ。妙に怪しい仮面を見付け、立ち止まる。
どう見ても素人が作ったであろう粗末な作りの仮面なのだが、妙に惹かれる所があった。
なんだろう。何が良く見えるのだろう。首を傾げながらそれを懸命に見つめていると、おかしな部分に気が付いた。それは単なる仮面ではなく、色んな種類の仮面のパーツをつなぎ合わせた、いわゆるジャンク的な感じの仮面だったのだ。
ふとそのパーツの一つに目が行く。もしやと思い、私はそれを購入し、日本へと持ち帰った。
そして私はその仮面から気になる一つの破片を丁寧に取り出し、例の割れた仮面にそっと近づける。
驚く事に、それは完璧に合わさったのだ。
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