#99 『違和感』
住み始めて一ヶ月ほど経った辺りで、妙な違和感を覚えるようになった。
そこは家賃四万円のワンルーム。霊感があると言う友人を内見に連れ回し、「ここは大丈夫」と太鼓判を押された賃貸マンションだった。
最初の違和感は、寝ていると顔に何かが触れる感触だった。何がどう触れているのかまでは分からない。ただ、何かが顔に当たる感触だけはあるのだ。
次の違和感は部屋の色んなものが時折、元あった場所とは微妙に移動していると言う感覚。
それはテレビのリモコンだったり、飲み残しのマグカップだったりと、気のせいと言われればその程度の違和感だった。
忙しさのせいで掃除を一週間ほど怠ったある日、次の違和感があった。日曜日の朝、掃除機を掛けると、やけに吸い込み音がバチバチとうるさいのだ。そう、まるで砂の粒でも吸い込んでいるかのような音だ。気になって掃除機を開けてみると、そこには白い結晶の粉が溜まっていた。
奇妙に思った私は、例の友人に電話で相談してみる。すると友人はすぐに尋ねて来てくれて、同時に内見の時とは違う感覚を指摘した。
「何か違う」言いながら友人は部屋中のものを確認して行き、最後に押し入れのドアを開ける。
「あぁ、ここだ」と、友人は天井を見つめ、頭上の板を外す。そうして明かりで天井裏を覗き、尋常ではない悲鳴を上げた。
「どうしたの?」と言う私の問いに、「見ちゃいけない」と友人は制止する。
「人がいたの?」と聞けば、「そうではないけど」と口ごもり、友人は110番をダイヤルしながら、「天井裏は隙間が無いぐらいに盛り塩だらけだった」と答えた。
私は同時に、顔に何かが触れる感触と、部屋に白い粉が溜まる理由が分かった。但し、そんな真似をする者の心当たりは無い。
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