#90 『枯れ葉』

 部屋の隅に、枯れ葉が溜まるのだ。

 気が付けば何故かそこにある。しかもそれは日を追って増え続け、今ではもうゴミ袋の半分ぐらいは枯れ葉で埋まってしまうぐらいだ。

 ある日の休日など、私が部屋にいるにも関わらずいつのまにか積っていた。背後でカサカサと聞こえて振り返れば、もうフローリングの床の上は枯れ葉が敷き詰まっている。

 ある晩、ベッドで寝ていると、リビングの方から足音が聞こえて来た。しかもそれは、枯れ葉を踏んで歩いている足音だ。それを聞いて私はふと、あの足音は幼馴染みのY美のものだと直感した。

 翌日、無理矢理の休暇届を出し、実家へと帰省した。久し振りの両親との対面だったが、心ここにあらず。私の気持ちは既にY美の所へと飛んでいた。

 実家の裏手に、大きな森があった。子供の頃、Y美と一緒に良く遊んだ場所だった。

 私は一人、森を歩いた。Y美とは高校を卒業し、就職先まで一緒だった仲だ。私は懐かしさと後悔を胸に、一人、森の中を歩いた。

 やがてとある一画へと出た。森の中にぽつんと現れる、火山岩が露出した岩場だ。私はその場でしゃがみ込み、両手を合わせて祈る。そこはかつて、Y美と逢った最後の場所。安らかに眠ってくれと願っていると、背後で足音がする。

 振り返ればスーツ姿の男性が二人。胸ポケットから警察手帳を取り出しながら、「Y美さんの事をお聞かせ願えますかね」と、私に聞いて来た。

 どうやら、長年行方不明だったY美の白骨死体がここから発見されたらしい。

「極秘の捜査だったにも関わらず、どうしてここで手を合わせていたのですか?」と私は聞かれ、思わず私はこう答える。

「Y美が発見されたのはいつですか?」

 半月程前だと聞き、なるほど、部屋に怪異が起きたのと同時期だなと私は思った。

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