#77 『点と線』
新しく建った我が自社ビルには、何故か開かずの間が存在した。それは僕のいる広報部のフロアの女子トイレ、奥から三つ目の個室がそうだった。
当然、女子用なのでそこで用を足した事は一度も無いのだが、そこを使った女子社員は大抵、何かしらの怪異に遭遇したと言う。おかげで新築のビルだと言うのに、早々にそこだけは使用禁止のビラが貼られ、開かずの間のトイレとなってしまった。
そんな事が起きて数日後、もっと驚く噂が立ち始めた。それは、不思議とどこのフロアのトイレも、同じような事が起こっていると言う事。そしてそれはどれも、女子トイレの中なのだと言う。
それ不可解に思った僕は、無理にお願いをしてその自社ビルの見取り図のコピーを手に入れた。それを使って怪異のあった場所に印を付けて行くと、やはりそれは全て上下の一点で繋がっている、奥から三つ目の女子トイレの個室であった。
まず僕は、地下から捜索を始めた。地下には女子トイレは無く、その怪異のある一点は倉庫となっている。聞けばやはり、その地点でおかしな現象が多発していると言われた。
次に僕は屋上を調べた。驚いた事に、そこには屋上には小さな鳥居と祠があった。どうやら元々この場所にあった祠のようで、自社ビルが建つと同時にここに移されたのだと言う。
ようやく原因が分かった。測量した結果、その祠の位置と、怪異のある上下の一点は、ほんの僅かだがズレがあったのだ。
やがて僕の意見は汲み上げられ、祠は怪異のある一点の真上へと移動された。
それ以降、怪異の報告は一件も無くなったが、全フロアの開かずのトイレは、「気持ち悪い」と言う理由で、未だ健在である。
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