#75 『零時の訪問者』
ある時から、玄関のチャイムが鳴らされる悪戯に悩まされる事となった。いわゆるピンポンダッシュと呼ばれるやつだ。
しかもそれは常に深夜の零時。実際に見て確認した訳ではないが、恐らくは零時ちょうどに鳴らされている感覚があった。
一度、玄関前で待ち伏せして、鳴らされると同時にドアを開けた事があった。結果、そこには誰の姿も無かった。
友人にその事を話すと、監視カメラが良いと言う返事をもらった。今は数千円で高性能のものが手に入ると聞いて、私はすぐにそれを購入。取り付ける事にした。
そうして分かった事だが、毎晩のように悪戯をしに来る者の正体は、白いパーカーでフードを頭にかぶった、おそらくは少年だろうぐらいの年頃の男だった。カメラの映像にはそれがハッキリと映っていた。零時ちょうどを待ち、チャイムを鳴らして走り去る姿。
私は三日分の証拠を保存し、四日目は再び玄関先で待ち伏せする事にした。今度は零時を待たず、十秒前にドアを開ける事にした。だがやはり、ドアの向こうには誰もいなかった。
今日は空振りかと、一応外の様子を確認し、家へと戻った。
翌日、その映像にはとんでもないものが記録されていた。
零時を待つようにチャイムの前で腕時計を確認している少年。そして零時を待たずしてドアを開け、外を確認する私。
私はそのまま少年を無視し、外へと出て、表の通りを確認している。そしてその少年はそんな私の後ろ姿を眺めながら、スッと家の中へと入って行った。
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