#68 『ライブの夜に』
筆者が怪談ライブでお世話になっている、都内某店のマスターの話。
私が定例怪談ライブをひらいた、第四夜のその晩の事だったらしい。マスターはその店の四階に寝泊まりするスペースを設けているのだが、イベント後、そこで仮眠を取った時だった。
階下より物音がする。確かエントランスの鍵は閉めた筈だし、残った客もいない筈だと思いながらも、不安となり懐中電灯を片手に見回りに向かった。
地下から四階まである店だが、縦に長いだけでスペース的に広い訳では無く、人が隠れられる場所も無い。あっと言う間に地下のカウンターまで降り、安全は確認出来た。折角なのでトイレを済ませて戻ろうと、地下奥のトイレへと向かうのだが、怪異はその後に起きた。
トイレから出てカウンターに戻ると、その向こうにシルエットだけの人影が見えた。顔や服装は分からない。だが確実に男であると言うのは分かった。マスターは懐中電灯を取ろうとするが、皮肉にもそれはカウンターテーブルの上にあり、その人影にとても近い。
仕方なくトイレへと取って返して、店中の電気を点ける事にした。なにしろ店の照明のスイッチは全てそこにあるからだ。
だが、照明を点けた後には誰の姿も無い。再び店内を見て回るが、やはり人の姿はどこにも無い。だが不安になったマスターは、結局どのフロアの照明も点けたまま眠る事にした。
数時間後、またしても妙な物音で目が覚めた。起きて少しして、ようやく異変に気が付いた。店の照明が全て消えているのだ。
慌てて懐中電灯を探す。目の前に、シルエットだけの男の姿があった。
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