#67 『ゴミ収集車』

 うっかり朝のニュースに見入ってしまい、気が付けば窓の外からゴミ収集車が奏でるオルゴールの音が聞こえて来ていた。

 私は慌てて二袋ものゴミを持ち、急いでエレベーターに駆け寄った。

 収集車は既に清掃を終え、発車していた。だが同じマンションの敷地内で捕まえる事が出来、私は「待って」と叫びながら走り寄る。――その時だった。

 車のコンテナのドアから覗く、一本の白い腕。それがだらりと垂れ下がり、揺れているのが見えた。

 私は込み上げる悲鳴を飲み込みそれを凝視していたのだが、その白い腕はずるりとドアの内側へと引っ込み、一瞬で消えてしまった。

 今のはなんだったのだろう? 思ったまま立ちすくんでいると、私の持つゴミをそっと横から受け取りながら、「良くある事ですから」と、清掃員のお兄さんは笑いながら車に乗って走り去って行ってしまった。

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