#45 『首くくりの家』
近所に曰く付きの廃屋がある。誰が名付けたかは知らないが、その家は昔から“首くくりの家”と、そう呼ばれていた。
実は私も一度、どうしてそんな名前が付いたのかが良く分かる怪異に遭遇した事がある。夕刻、陽が傾き始めた頃になると、家の奥側から西日が射し込めて、暗い室内が表の通りからでも見えるようになり、まさにそのタイミングで私はその家の前を通り掛かってしまったのだ。
斜めに射し込む明かりに、シルエットとなって浮かび上がる天井から吊された人の姿。私はそれを見て悲鳴をあげたのだが、どうやら近所に住む人達はその怪異慣れっこらしく、「何もいないよ」と玄関を開けて見せてくれた。
確かにそこには何も無く、ただがらんとした空き家の内部が広がっているだけだった。
しかもその家は特に事故や自殺などがあった訳ではなく、どうしてそんな怪異が多発するのかさえ分からないのだと言う。
ある日、その家の窓全てに板が張られて中が見えないようにされていた。それ以来、怪異に遭遇した人はいなかったのだが、ある日、その廃屋から異臭がするとの事で中を探ると、首を吊った身元不明の女性の遺体が発見されたとの事。
順番こそ逆ではあったが、とうとうそこは、名前通りの家となってしまったらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます