#14 『蛙』
休日の朝、寝室でだらだらと惰眠を貪っていると、リビングから蛙の鳴き声が聞こえて来た。
見に行ってみると、確かにそこに蛙はいた。テーブルの上、小さな緑色の蛙が一匹。
どこから入って来たのかはまるで分からない。私は元々、昆虫や爬虫類の類いは嫌いではなかったので、手ですくって外へと逃がしてやった。
だが翌日、またしてもリビングで蛙の鳴き声がする。前日と同じ蛙かどうかは分からないが、小さい緑色の蛙だった。
それは四日連続で起こった。流石に五日目ともなると、この子はこの家にいたいのだろうと勝手に解釈し、私は金魚用の水槽でその蛙と飼う事にした。
その翌日。早朝から蛙の鳴き声が凄かった。うるさいなぁと思いながらも寝ていると、次第に鳴き声が変わって行く。ケロケロと可愛く鳴いていたものが、いつしか男性の上げる嘔吐のような事に変わった。
怖いながらも私はその声の主を確かめようとリビングへと向かった。
電気を点ける直前、激しい嘔吐と、吐瀉物を床にぶちまける音。何事だと思ってスイッチを押せば、そこには誰の姿も無く、床に汚物がある訳でも無かった。
それどころか水槽の中の蛙の姿も無い。ようやく私は、あれは蛙ではなかったのだと気が付いた。
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