#13 『心霊写真』
昭和の頃の話。当時流行っていたロックバンドのコンサートを観に行った時の事。私は憧れのボーカリストを、カメラで撮影した。
帰って現像してみると、その中の一枚に、奇妙なものが写っていた。
それはステージの後方。段差の下の向こう側に、女性のものらしき顔が写っていたのだ。
そのときはそこに誰かがいたのだろう程度にしか思わなかったのだが、何度か見返している内に、それが心霊写真の類いだと気が付いた。なにしろ、その写真を見る度にその女性の顔が大きくなっているのだ。
怖くなり、一緒にコンサートへと行った友人達にそれを見せると、既にその顔はドラムのスネアーぐらいの大きさとなっており、友人達もお祓いした方がいいと勧めて来た。
そうして私が神社へと向かおうと決意したのは、その女性の顔が手前のボーカルの背丈を超えようとするぐらいまで大きくなっていたのを確認した時だった。
うつろな目で、ぼんやりと前方を見つめる気味の悪い女性の顔。私は仲の良い友人に頼み込み、お祓いで有名な神社へと向かった。
だが、神社に着いて神主さんにその写真を見せると、既にその女性の姿は無く、代わりに神主さんは、「帰り道に気を付けなさい」と忠告してくれた。
帰り、鳥居の前に人影があった。私はなるべくそちらを見ないよう、横を通り過ぎた。
そこに立っていた女性はやけに生気が無く、うつろな目で前方を見つめていたからだ。
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