　新築のマンションの一室を購入し、引っ越しをした。その彼の住む部屋は、三階だった。

　やはり新居はいいなとリビングでくつろいでいると、突然窓の外にぶらりと、足が二本ぶら下がった。

　こりゃあ出たかと思い、慌ててベランダに飛び出し、上を覗いてみる。するとどうやら上の階の子供がふざけているだけのようで、下半身だけをベランダの柵から外に出し、足を揺らしながらぶら下がっていただけだった。

　危ないからやめなさいと、母親らしき怒鳴り声が聞こえた。するとその足はするりと柵の中に消え、すぐに少女と母親が僕の方へとのぞき込み、「ごめんなさいねぇ」と頭を下げていた。

　ただのイタズラだったかと胸をなで下ろしたが、どうにも腑に落ちない部分はある。ウチのベランダの手すりを見た所、どう頑張っても子供の胴体が外に出られるぐらいの幅で出来てはいなかったからだ。

　翌日、外から自分の住む部屋を見上げてみた。やはり上の階の手すりも同じように幅が狭い。どころか、例え子供がそこからぶら下がったとしても、足を階下まで伸ばせるほど短い距離ではなかったのだ。

　管理会社に、上の階の住民の事を聞いてみた。返答は、「まだ入居者は誰もおりません」だった。

　それからも時折、ベランダに子供の足がぶら下がる事がある。上の階は相変わらず、新築分譲のまま買い手は付いていない。

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