#6 『花瓶』

 新居の窓辺に花瓶を飾った。だが翌日にはその花瓶は割れていた。

 ペットは飼っていない。ならばどこからかすきま風でも入っているか、それとも微弱な地震でもあったか。とりあえず私は考えるのをやめにして、割れた花瓶を片付け、そこに別の花瓶を置いた。

 しかし花瓶はまた割れた。そしてその翌日も同じ、窓辺に置いた花瓶は私がいない時を見計らうかのように倒れて割れるのだ。

 私は友人にその事を相談した挙げ句、手のひらサイズの小さい監視カメラを購入し、設置した。

 家に帰ると、やはり花瓶は割れていた。私はすぐにそのカメラの映像を確かめた。

 驚いた事に、犯人は全く見知らぬ女性だった。カメラに突然現れたかと思うと、ヒステリックに花瓶を放り投げ、そしてその花瓶が置かれていた場所に何かをしていた。私にはすぐに分かった。これは盛り塩だと。

 女の姿は忽然と消える。同時に盛られた塩も無い。これはどう言う事かと、その映像通りに窓辺に盛り塩してみると、確かに怪異は無くなった。

 しかし、釈然としない不快感だけは今も私の中に残っている。

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