#5 『ベランダ』

 家のベランダにテーブルと椅子を置き、そこでお茶をしながら読書をするのが私の目下の趣味だった。

 日曜日、昼食後に私はいつも通り、淹れ立ての珈琲と共に本を一冊持ってベランダに向かった。

 そうして本に夢中になっていると、突然、日が蔭って文字を追えなくなった。

 私は急に曇りになったのかと思ったのだが、そうではなかった。空を見上げればまるで夜のごとくに闇が広がっていたからだ。

 慌てて部屋へと戻り、電気を点ける。そこで私は驚いた。僅か一瞬で時間が飛び、時刻は夜更けのものとなっていたからだ。

 読書しながら寝てしまったのだろうかとも疑ったのだが、ベランダに取りに戻ったマグカップは、依然熱いままだった。

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