#2 『紐』

 真夜中に目が覚める。やけに人の話し声がうるさかったせいだ。

 ごにょごにょごにょごにょと、不鮮明な複数人の声が聞こえる。内容が分からないのが余計に気持ち悪い。

 家の前か? いや、どうやらもっと近くで話しているらしい。

 ならばどこ? そう考えたら、玄関前の廊下か、もしくはこのワンルームのどこかだ。

 気味が悪くなって、起き上がり照明の紐を探る。だが手は空振りするばかりで何も掴めない。

 すると声は、私が空振りするたびに嘲笑になった。同時に声の主がこの部屋の中にいる事が分かった。余計に私は焦り、空中に何も掴めないのがもどかしい。

 やがて声はさんざ私を笑った後、「ほら」と鮮明な声で言い、直後、私の頭に照明の紐の先端に結んであったマスコット人形がぶつかって来た。

 あの日以来、私は真っ暗な部屋で寝る事はしていない。

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