みっどないとだでぃ

みっどないとだでぃ

#1『移転』

 通学途中、以前に父さんが経営していた工場の前を通る。今日も二階の事務所の窓に人の影が映って見える。

 もう次の借り手が見付かったものだと思っていたが、肝心の工場の方はまるで稼働する気配が無い。

 ある日、父との会話でその事を持ち出した事がある。すると父は「あぁ」と頷き、あそこは更地にする予定でもう貸し出しにはしてないらしいとそう語った。

 今日もその工場の前を通る。二階の窓に人の影が見える。なんとなく父の会社が移転した理由が分かったような気がした。

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