第5話 「飢え」
次の日、私が冒険者ギルドに行くと、受付の人達や冒険者達が少々焦った様子でなにやら準備を始めてた。
「エンリテェアさん」
受付の人が私の名前を呼ぶ。私は邪魔にならないように素早く受付の所まで向かい、拗ねてみると受付の人が話し始める。
「皆さん何か焦ってるんですけど...今日なにかあったんですか?」
「いえ、特に何もありませんよ。多分エンリテェアさんの戦いを見て、皆さんも試行錯誤してるんじゃないでしょうか?」
「なるほど?」
私は何かはぐらかされたような気がしたため、受付の人と会話しつつ、横目に冒険者達を監視する事に決めた。
「それで、今日もいつも通り山に行くんですか?」
「ええ、その予定ですね」
私がそう言った瞬間、何人かの冒険者が胸を撫で下ろしたため、私に何か関係する事だと分かる。
「わかりました、それじゃあ頑張ってくださいね」
受付の人はそういつも通りに笑顔で私に手を振る、私は笑顔で「行ってきます」と言って頭を下げて山へ向かった。
(あの人、ベテランなんだな〜)
私は受付の人を思い返しながら山へ向かっていた。
私は多少、表情から相手が何を考えてるのか分かるのだが、あの人はよく分からない。
先輩の話だと結構なベテランらしく、冒険者の顔を見ただけで、怪我を隠してることが分かったり、そろそろこの場所を去ることがわかったりするらしい。
確かに冒険者ギルドの受付は、人の顔をよく見る仕事だとは思うけど、彼女の場合は多分才能も合わさってるんだろうなと思った。
そんな事を思いながら私は山の中に入ると、いつもより何か違う気がした。なんだろう、何か何時もより別の奴がいるような気がした。
私は警戒心を常にMAXにしながら、森の中を探索し始める。とりあえず前回、赤い木の実を見つけた所まで歩く、周りは異常と思うほど静かで、普段は聞こえてた鳥の鳴き声ひとつも聞こえない。
「?」
地面をよく見ると小さな鳥が倒れていた。
「....」
その鳥の片翼は溶けており死んでいた、そして溶けている所から赤い黒い液体が漏れ出ていた。
(何かまずい!)
私はその死体に向かって、ファイヤーショットを放ち鳥を燃やすと、死んでたはずの鳥の死体はビタンビタンと跳ねたが、そのまま燃えて骨だけが残った。
(....この森に何が起こってるの......?)
とりあえず私はギルドに報告するために後ろを振り向くと、そこには茶色の毛に所々、ツタのような模様の緑の毛が生えている、フォレストボアーがいたのだが....
「ぶおじゅ....」
身体の所々が溶けていて中身が見える、しかも足の1本は完全に無くなってる代わりに、赤黒い液体がフォレストボアーの足を形成していた。
私は、危険を感じてその場から走り去った。
恐らく何らかの変異種のせいだろうか...?
変異種。
それは低確率で生まれる特別なモンスターの事。腕が4本あるオークや、頭が大量についてるハントウルフ等が挙げられ、体の変化に加え身体能力の強化や元々そのモンスターが持ってない能力をもってたりと、危険性がとても高い。
そしていちばんの懸念点が変異種と普通種は普通に交配でき、同じように変異したモンスターが産まれてくるため、早めに倒しておかないと色々大変なことになるのだ。
私は走りながら考える。恐らくフォレストボアーの変異種では無いだろう、理由は体が溶けているのとあの足だ、恐らく正体はスライムの変異種だろう。
確かスライムの中には、鉄さえも溶かすほどの液体でできている個体もいるため、モンスターの1部を溶かすのは不思議では無い。
だが、なぜフォレストボアー.....いや、あの鳥にもあの液体が入ってた....つまり......
私は立ち止まり周りの様子をよく見ると、所々溶けている、モンスターが着々と周りを囲んでいた。
(まずい...!)
私は瞬時にまだモンスターが居ない場所に向かって走しりながら、ソリキッドを地面に広げた。周りのモンスターが反応して、私の後ろから追っかけてきたため、私はジャンプしたあと、後ろを振り向き、ライトニングアローを放ちソリキッドに当てる。すると、ソリキッドから電流が伝わり、感電した周りのモンスターはどさどさと倒れる。
(よし!)
私がそう思ったのもつかの間、ムクリと幾つかの体の大きいモンスターは起き上がって、再びを私を追いかけてきた。
「くっ....!」
(不味い不味い不味い.......どうする.....どうやって振り切る?)
私は走りながらちらっと後ろを見る、やはりモンスター達は全力疾走で向かってきた。
私は頭の中で打開策がないか考えていると、あの池を思い出す。私は方向転換をして、思いっきりその場所に向かって走った。
「はぁ..はぁ.....ふぅ......」
私が池につき後ろを見ると、そこにはもうあのモンスター達の姿はなかった。
私は一安心した後その場に座り込み、これからの事を考えようとしていると、向こう側からガサガサと何かがやってきた。
「...,し、食料......」
恐らく私より2歳年上の男性がフラフラとそう言いながら歩いきた。
「.....」
私は警戒しながらも、男に溶けてる部位がないことを確認すると、赤い木の実を相手に投げた。
「くれるのか....?」
「少しはお腹が脹れるかと」
「ありがとう....そして、いただきます」
男は感謝して木の実を大切そうに食べ始めたが、やっぱり少ないと思っため、私は池の中をみる。そこには食べられる小魚がいたため、私はソリキッドでナイフを作って、投擲し魚を狩る。
私は10匹ほど魚を取ると、周りを見て1部とけてないか確認して、問題がなかったから雷魔法で魚を焼いて、男に差し出した。
「これもいいのか....!」
男はそう言いながら魚にかぶりつき、少しして間食してしまった。
「ご馳走様だ、命の恩人よ」
「気にしないでく、私が心配して助けただけだから」
「いや、気にする....あ、幾つか聞いてもいいか?」
「大丈夫ですよ」
「ありがたい、っとまず自己紹介だな、俺の名前はカゲタミ=カリガタで冒険者をしている」
そう言って懐中時計を見せてきた。
「私はエンリテェアと言います」
私もそう言い、懐中時計をみせる。
「エンリテェアか、いい名前だな。それで質問なんだが、この森を降りたら町はあるか?」
「ありますよ」
「ありがとう、それで次の質問なんだが...この森はいつもこの調子なのか?」
「所々解けているモンスターがいる事ですか?」
「あぁ」
「いないです、恐らく変異種の影響かと」
「変異種!?何時から発生していた?」
「おそらく今日かと、私は毎日ここに通っているのですが、この現象は初めてで」
「ふむ...」
「あの、私から質問いいですか?」
「...恐らく服装か、どうしてあんなにフラフラしていたか、のどちらかだろ?」
「はい」
そうなのだ、このカゲタミと名乗った男は布でできた服装しか来ておらず。その服も恐らく特別なモンスターの素材からとかではなく、市販の服だと思う。
「この服装なのは俺がこの服を気に入ってるのと、俺は別に鎧があるからだ」
「出身は?」
「魔刀流の修行のため、東の方から」
「魔刀流?!」
魔刀流
それは、扱える人がほとんど居ないと言われている剣術で、刀に魔力を纏わせ使う人によって様々な技繰り出されるという噂がある。
私も本で少し知ってるだけで、詳しい情報は知らないため、少し興味があった。
「まだまだ最初の型しかつかぬがな....」
「まぁ、話を戻そう...この状況をどうするかだ」
私はその言葉を聞いてビクッとする。
「ですよね...」
私は感じないようにしていたのだ、池の周りにモンスターが集まってきていることに.....
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