第13話 共存社会
五条家で暮らすようになってから気になっていたことがある。
俺は家の中でコタツに入ってミカン食べながら庭の方を見ていた。
気になっていたことと言うのは庭で慌ただしく働いているのはメイドである。
一見すればただのメイドだ。
だがこのメイドたち。様子がおかしい。
俺はカレンダーを見た。
あれから月日は流れて、2月の中盤。
はっきり言ってまだまだ寒いし今日に関して言えば雪降ってる。
なのにも関わらず
(なんでこの人たちは半袖なんだ)
以前から家の中で見かけた時も半袖だったのだが、その時は「暖房が暑いのかな?」くらいに思っていたのだが。
明らかにおかしいだろ、これは。
半袖なのが1人なら特に何も思わない(それでもはっきり言って異常だが)
しかし現実は全員半袖だ。
「寒くないのかな、あれ」
ふと呟いてた。
その呟きを聞いてたのは結衣だった。
「メイドのことですか?」
「うん」
「寒くないですよ。彼女たちは人じゃないので」
「え?」
「?」
耳を疑った。
まさか結衣が「人じゃない」みたいな差別的なことを言うと思わなかったからだ。
(どういう意味だ?それは)
そう思って結衣に聞いてみることにした。
「人じゃないっていうのは?」
「そのままの意味ですよ。彼女たちサキュバスですから。あれ?知りませんでした?」
(あー、そういうことだったのか。びっくりした)
「知らなかったな。でも大丈夫なの?モンスターなんか敷地に入れて」
「サキュバスは比較的温厚ですよ。それにあの人たちはダンジョンに入ってきたお父さんが連れて帰ってきた人達なんですよ。調教もしていますので人を襲うことはありません。兄さんも二重の意味で襲われたことはありませんよね?」
ぱちぱち。
俺は何度か瞬きしながらサキュバスたちを見てた。
「なるほどなぁ。たしかによく見たら尻尾が生えてる?」
って思ってから俺は結衣に目をやった。
(ん?ってことは待てよ?)
「そういえばこの家に来てから君のお母さん見てない気がするけど……ひょっとして……サキュバスの子だったり?」
そう聞いてみると結衣は小さくクスクス笑ってた。
「どう思います?それとも確認してみますか?尻尾でも?」
ゴクリ。
(いいのか?確認しても……)
でも、よく考えろ。
向こうはまだ10歳の女の子だぞ?いいのか?!本当に?!
(1/2で犯罪になるかもしれない)
だが、1/2を引けば相手はサキュバスのため強引に見てしまっても犯罪ではなくなるだろう。
サキュバス相手にセクハラなんて概念は存在しないからだ。
何故ならサキュバスなんてものはセクハラという概念が歩いてるようなもんだからだ。
セクハラにセクハラをしてもセクハラにはならない(謎理論)
何が言いたいかと言うとサキュバス相手には何をしても許されるはずだ。
だがもし人間なら……。
「零兄様のことはお慕いしております。ここでナニが起きても私は誰にも言いませんよ?兄様?」
よし……。
答えは、出た。
「確認しよう。ほんのちょっとだけ確認するだけだから」
◇
結果的に言うと生えてなかった。
つまり人間なのだが、結衣は全然気を悪くした様子もなかった。
それでそのまま別の服を見に付け始めた。
服というのは、いわゆる正装である。
ビシッとした制服。
「服を脱ぐ手間が省けましたよ。兄様。ありがとうございます。さて、ではそろそろ行きましょうか」
「えーっと?」
「今日は入学試験の日ですよ。私の事応援しててくださいね♡」
あっ、結衣に誘惑されたせいで忘れてしまっていたがそうだった!
ちなみにだが俺はこの入学試験を受ける必要は無い。
推薦枠というのはそういうものだから、である。
俺達は勇気さんが運転する車で山を降りていた。
山の中の家というのは大変である。
山から市街地に向かう。
窓から外のことを見ていると前世では考えられないような光景が広がっていた。
「わぁ、トロールやゴブリンがなんか建物を建ててる」
「零くんは初めて見るのかい?」
勇気さんにそう聞かれた。
「はい。俺は見たことないですねこういうの。でもあれ大丈夫なんですか?」
「問題ないよ。機械を使って人の言うことを聞くようにしてるから。それといつも近くには探索者がいて、モンスターが暴れだしたら対処できるようになってるよ」
「へぇ」
すごい時代だなぁ。
話を聞くといわゆる3K(汚い、キツい、危険)な仕事は全部モンスターがやってくれるようになっているそうだ。
農業やってるとことかにいけばゴブリンが田植えしてたりしてるんだって。すごいよね。
でも、ダンジョン攻略だけは人の力がいるみたいだけど……。
改めて思ったけど俺は本当にすごい世界に転生してしまったようだ。
そんなわけで無事に俺たちは学園の前までやってきていた。
(おぉ〜……)
どうやらこの学園は車で中に入ることも出来るようだ。
そんなわけで俺たちは車で中に入っていったのだが……中には駐車場があった。
そこに車を止めて俺たちは車をおりた。
それで目の前の学園を見た。
「でかっ!」
「日本一大きい学園ですからね。面積は、分かりませんけどめっちゃ広いです!」
結衣がそう説明してくれた。
ちなみに全校生徒は3000人程度らしい。
1学年1000人くらいなんだそうだ。
その1000人の枠に3000倍の300万人が応募してくるらしい。
ちなみに何回か試験があって一次試験は書類だけ見てほとんどが落とされるそうだ。
(ほんとに入れるだけでエリートだよなぁ)
そんなことをしみじみ思うし。
俺はその入学するためのフリーパスを手に入れてしまっていた。
ありがたい話である。
「じゃ、おふたりとも。私は試験を受けてきますね」
結衣はそう言って試験会場に向かっていった。
俺は勇気さんと顔を見合わせた。
「僕達はカフェかなんかで時間でも潰そうか」
「カフェなんかもあるんですねぇ」
「あるよ」
そう言って歩き出した勇気さん。
歩いてる途中でいろんな景色を見て呟いてた。
「懐かしいなぁ、あの頃からあんまり変わんないや」
(そういえば、この人もここの生徒だったんだな)
つまり勇気さんもこの学園に入学を許されたエリート中のエリートなのであった。
俺も家名に泥を塗らないように頑張らないといけない。
で、ふと思って俺は勇気さんに聞いてみた。
「ところで優斗はどうしたんです?」
「あー、優斗なら書類で落ちたよ。なはは……」
(卒業生の子供であっても書類でばっさり切られる学校、ほんとに厳しい学園だなぁ……)
俺は今から気を引き締めるのだった。
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