旧知のカースマルツゥ 2
希望と別れてからほんの少し、駅で電車に乗ってひとつ隣の駅へと向かった彼は、近くのホテルに宿泊した。わたしはこれに疑問を抱き、聞いてみた。
「なぜ家に帰らない?わざわざ宿を取ることも無いだろう?」
「いや、だって・・・・・・魔術師が襲撃とかしてくるかもしれねえだろ?」
ホントに呆れた奴だ。話をちゃんと聞いてないのか?
「それならつい昨日、闇の魔術師が言ってただろう?『二日先に延ばした』とな」
「そうだっけ?」
はぁ・・・・・・ため息が出る。まぁしかし、あの激戦の後故、疲弊していてそこまで頭が回らなかったとしておこう。
「まぁいい。とにかく、ゴエティアは明日の夜、日が沈み夜の
わたしがゴエティアを少し説明したのを聞いて、「ふーん」と若干興味無さげに言うと、ホテル一階のコンビニで買った『カリカリベーコンと”激”ニンニク香るペペロンチーノ』というパスタを頬張り始めた。その名前から想像できる通り、強烈なニンニク臭を放出している。部屋まで持ってくる間に乗ったエレベーターにはおそらく、その残り香がへばりついていることだろう。次にそのエレベーターを利用した宿泊客や従業員のことを考えると、気の毒に思える。
他にはブラックコーヒーを一缶と、値引きシールの貼られた少し値の張るデザートを一つ、あとは適当な菓子類が入っている。
「こんなに買ってどうする?まさかとは思うが、死ぬかもしれないことを考えて、人間たちが妙にありがたがるあの”絵画”のように、『最後の晩餐』とでもしゃれ込もうとでも?」
「そうじゃねえよ」
「では、なんだ?」
彼にそう言うと、彼は少し考えてから答えた。
「お前とも少し、話しをしたくてさ」
「わたしと?なにを話すというのだ?」
そんなことなら尚更、ホテルである必要は無いだろうに。
「お前の・・・・・・魔術師としての話を聞きたくってさ」
「わたしの魔術師としての話だと?どういうことだ?」
「うーん・・・・・・なんて言えばいいのかなぁ」
割りばしの先端でこめかみを押さえ、また少し考えてから彼は答えた。
「希望とさ、いろいろ話してたらどうしても気になったんだよな。お前が魔術師として参加した、前のゴエティアの話」
「ああ、そういうことか」
前のゴエティア・・・・・・確かに、わたしはそれに参加していた。そして勝った。願いも叶えてもらった。しかし・・・・・・。
「そのことについてだが・・・・・・生憎、覚えていないのだ」
「覚えてないの?!」
「うむ、全くどうしてか。何一つとして覚えがない」
「ホントに?なんにも?ほんの少しですら?!」
「くどい。何も覚えていないと言ってる。勝ち残り、願いこそ叶えはしたが、それだけなのだ」
「な・・・・・・なんでなんだろ?」
それはこっちが聞きたいことだ。なぜ、記憶が無いのだ。
「じゃ、じゃあさ。その、叶えてもらった願いってのは?」
「ふむ、それならハッキリと覚えているぞ」
「マジ?なになに?」
くだらんことに好奇心なぞ持ちよってからに。だが、それを聞いて少しでもゴエティアに勝つ意味を見出せるなら、それが活力につながるならば、答えてやってもよいと思い、わたしは答えた。
「わたしはな、”魔人”になったのだよ。魔女の召喚した魔人を殺してな」
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