幕間のウイトラコチェ 8

「なあ進、戦いってなによ?」

 希望が食い入るように問いただす。元々言うつもりできていたのだろうに、うっかり口を滑らせたばっかりに、会話のリードを許してしまった。

「えっと・・・・・・」

 バツが悪くなり視線を逸らすも、希望は彼を逃がさない。

「おいおい、友達に言えねえなんてことは、ねえよなぁ?」

「ぐ・・・・・・」

 さすがにこれには彼も観念して、自身が何に巻き込まれてしまっているのかを、話し始めた。

「実は・・・・・・魔術師のなんつーか、ルール?掟?そんな感じで、戦わなくっちゃならないんだよね」

「戦いねえ・・・・・・まさかとは思うけどよ、命の奪い合い・・・・・・なんてことは、ねえよな?」

 希望の勘は鋭かった。もし、彼にわたしが見えているならば、「正解、おめでとう」と祝福したことだろう。

 希望の返答に、彼は黙って頷いた。それを受けて、煙草を深く吸ってから、モクモクと灰色の煙を吐き出すと、その心中を吐露した。

「はぁ・・・・・・お前さぁ、マジかよぉ・・・・・・つか、じゃあなに?その戦いで死ぬ可能性あり、ってこと?」

「まぁ、そうだね・・・・・・」

「おま・・・・・・それ言うために呼んだのかよ・・・・・・」

 空気が重くなった。さきほどまでは、未来ある明るい話のようなものだったのに、今となっては『命』がかかわる重大な話なのだからな。

 希望は前のめりになり、なにかを考えていた。

「でもさ」

 なにかしらの答えを掴んだのか、希望が口を開いた。

「他の魔術師をさ、お前が全員倒しちゃえばさ、問題なくね?」

「簡単に言うなぁお前・・・・・・一応他の魔術師たちにも『命』ってのがあるんだぜ?」

「あ・・・・・・そうだよなぁ・・・・・・」

 まだそんなことを・・・・・・つくづく優しい奴め。

「小僧」

「なんだよ」

「魔術師は死後、どうなると言ったか覚えてるか?」

「覚えてるよ、『旧き友』だろ?」

「そうだ。そしてそれは、お前たちで言う所の『死』だ。お前たちの『死』に対する考えと、我々魔術師たちの『死』とでは、考えが違い過ぎる。お前たちの場合は”そこで終わり”なんだろうが、わたし達の場合は、”次に託す”なのだ。お前たちならば”遺言”、わたし達ならば”継承”なんだ」

「死の概念が違う、ってことか・・・・・・」

「そうだ。それをふまえて希望に伝えてやれ」

 そうすれば、希望が納得できる答えを出せるだろう。

 それとついでに、もう少し魔術師への理解というのを深めるべきでもある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る