幕間のウイトラコチェ 7

 希望の言葉に彼は驚いた。彼は理解するのに少々時間が掛かったが、希望にわたしの姿は見えていない。

「希望、お前・・・・・・こいつが見えてねえのか?」

「こいつってどいつよ?」

「な、なぁシア」

「なんだ?」

 彼は希望に背を向けて、わたしに聞いてきた。

「なんで希望にお前の姿、見えてねーの?」

「これも言い忘れていたが、わたし達魔術師と言う存在はな、魔力を持たぬ者、またはそういった素質が無いものには、見ることも探知することも出来ぬのだ」

「じゃ、じゃあ希望にはお前は・・・・・・」

「そうだ、見えていない。つまりお前は希望の前で、延々と独り芝居をしていただけと、そう希望には見えていたということだ。何も知らぬ希望からしてみれば、お前はやっぱり気でも狂ったのでは?とでも見えていただろうな」

 彼の顔色が青ざめていくのが見えた。自分の話を信じ始めていた友人の前で、疑いをもたれる行動をしていた可能性が、今後の状況に影響することを恐れたのだろう。

 彼は不安そうに希望の方へと振り返った。そこには変わらず、不思議そうな顔をした希望がいた。

「あー・・・・・・えっと・・・・・・」

 何ともまあバツの悪そうな。言葉が詰まるというのか?なかなか切り出せずにいると、希望が助け舟を出した。

「もしかして・・・・・・俺には見えねえ的なやつか?」

「そ、そうそれ!こいつさー、お前とか魔術師じゃない奴には見えねえって言うんだよぉ!」

 こいつって・・・・・・。わたしに対する礼儀がなってないんじゃないか?

「出たー!そういうのにありがちなやつぅ!お決まりってやつじゃんかよー!」

 希望はベンチの背もたれに思いっきり背中を預けた。折れてしまうんじゃないかというくらいに。そしてバネのように勢いよく体勢を戻した。

「あ、勘違いすんなよ!胡散臭うさんくせえとか、思ってねえからな!むしろ憧れだろ、そういうの?自分だけの特別ってやつ?いいなー、使い魔!!」

「小僧、言ってやれ。『使い魔というのをやめろ』とな」

「あー、希望。使い魔って言うなって、言ってる。こいつが」

 わたしの方を、左手の親指で指差した。指を差すな、指を。

「えー。使い魔じゃねえの?」

「正確に言うと、そもそも使い魔じゃねーんだわ。なんつーか・・・・・・俺が魔術師同士の戦いに巻き込まれた時に、急に現れて力を貸してくれたっつーか、そっからなんてーの?運命共同体ってやつ?」

 運命共同体か。なかなかいい言葉を選んだな。だがわたしは、お前と最後まで共にいる気はないがな。

 彼のそんな言葉を聞いて、わたしが興味を抱いた言葉とは全く違う言葉に、希望は反応した。そしてそれは、彼が説明しなくてはいけない、この会話の本質だった。

「なあ・・・・・・お前今なんてった?魔術師同士の、何?戦い?」

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