涵養のスヴィズ 7

 水には体積がある。常識だな、誰だってそう理解している。

 そういった性質を持っていない炎とは違い、それは確かにゴーレムに対して有効打となっていた。

 無意識的に発動した水の魔術、それに対して彼は、混乱している暇などなかった。

 倒れていたゴーレムはゆっくりと立ち上がり、再び彼へと向かって歩み出した。

「これなら・・・・・・!」

 彼は再度、水の魔術で作った砲弾をぶつけた。ゴーレムの岩の頭部ほどの大きさの砲弾は、どれほどの重量だろうか。そこに速度が上乗せされ、その衝撃がゴーレムの体に確かなダメージを蓄積させた。

 ゴーレムもただ攻撃を受けるだけではなかった。命令通り、彼への攻撃の手は休めることはない。水の砲弾の衝撃に耐え、攻撃範囲内に彼を捉えれば、その石腕を振り下ろす。体力の消耗もある彼だったが、その攻撃を自身の魔術を用いて回避した。炎の魔術による爆発での高速回避、そこから受けるであろう衝撃を、水の魔術で自身を覆うことで無効化。複数の魔術の同時発動、いやはや、本当に驚かされる。

 闇の魔術師もゴーレムのはるか後方で、しわがれた目を爛々と輝かせていた。

「ええのう、ええのう。ヒトにこんな可能性があるとはのう。長生きしててよかったわい」

 彼の攻撃が何度もゴーレムに炸裂するうちに、ついにその体に亀裂が走り、ゴーレムの動きが止まった。

「よっし!」

 確かな手ごたえを感じたのか、彼はガッツポーズをしてみせた。

 だが、その亀裂はゴーレムの”急所”には届いていなかった。

「喜んでいるところすまないが、あれではゴーレムを倒せんぞ」

 一度、動きの止まっていたゴーレムが、再び起動した。

「なんで?!」

「あれがゴーレムの性質だ。『一度受けた命令を遂行する』、停止するのはそれを完遂するか、”コア”を破壊されるかだ」

「うっは、ゲームのゴーレムみたいじゃん」

「その方がお前も分かりやすいか。それでいい」

「で・・・・・・核って、どこ?」

 いや、もう何も言うまい。わたしは心の底から重い溜息を吐いた。

「あのなぁ小僧。水の魔術師の時にも教えただろう?追うんだよ、魔力を」

 あー、と。思い出したようで、手を叩いた。そしてすぐに、彼はゴーレムに集中し、その魔力を追い始める。

 あのゴーレムは闇の魔術師が作ったものだ。その魔力が、ゴーレムを形成するのに用いられているのは確かなこと。その魔力の流れつく先は、ゴーレムの胸部、人間でいう所の心臓付近に辿り着いた。

「あった!胸のあたり!」

「そうだ。そこを重点的に攻撃しろ」

 彼は水の魔術を構える。弱点が判明したのだ、ならばあとは・・・・・・攻めるのみだろう。

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