給るホヴィロン 11
翌日、テレビでは昨夜の”事件”っを取り扱うニュースが流れていた。
「以上、本日から発売のエヌエヌマートの新商品のニュースでした!続いてのニュースです。昨夜未明、県内東部にある廃校敷地内にて、爆発事故がありました。」
映像が女性キャスターから切り替わり、爆発して見る影もない体育館の姿が映された。
「現場近くに住んでいる住民からの通報で駆け付けた警察によりますと、『大きな爆発音がしたとのことで駆け付けましたが、不思議なことに炎は見受けられなかった』とのことで、現在、調査中とのことです」
その後は、一緒に出演している芸能人キャスターが、あれやこれやと持論を並べていた。
「古い建物なので老朽化が進み、崩壊したのでは?」
「映像では確かに、体育館に使われていたであろう木材が、炭になっていましたよね?誰かがイタズラで、花火でもあげたらこんなことになったのでは?」
「花火でこんなことになりますかね~?」
たらたらたらたらと・・・・・・こんなことに大事な放送枠を二十分もさくとはな、つまらん番組だ。
そんなニュースを垂れ流しにしながら、部屋の隅では一人の男がビクビクと小さくなってうずくまっていた。
「小僧、いつまでそうしてるんだ?」
「いやいやいやいや、だってさ、こんなデカいニュースになってんだぞ!」
「だがニュースでは犯人は特定できてないようだが?」
「時間の問題かも知んねえだろ!」
「じゃあ聞き込みに来た警察を燃やしてしまおう。完全犯罪だ。立証も出来まいて」
「恐ろしいわ!!」
早朝、まだ日が昇る前の暗いうちに帰ってきた彼は、あれから一睡もしていない。無理もない、あんな胸の躍るようなことを経験したんだ、興奮冷めやらぬだろう。まあ実際は、違うようだったがな。
「つか仕事!どうすりゃいいんだよ!もし、現場から逃げてきた俺の事を見ている人が会社にいたらさ!!」
「燃やせばいいだろ?」
「ダメに決まってんだろ!!もうそれがずっと心配で、会社いけねえよ・・・・・・」
「それなら安心しろ」
「は?」
「お前がビクビクして食われる前のウサギになってるうちに、お前のスマホから会社に連絡しておいたぞ。お前の声色なぞ、魔術をもってすれば容易く真似できるからな」
「はいぃ?!てかお前、スマホ使えんのかよ!それによくよく考えれば、テレビもそうじゃん!!」
「ずっとメダルを通してお前を見ていたからな。犬が苦手なこと、ピカピカな硬貨を集めること、中学時代の初恋相手に、一日にシた最高回数・・・・・・」
「最後二つ余計だろうが!!」
「まあそんなことはどうでもいい。とにかく、お前の会社には有給休暇を申請しておいた。十日ほどはゆっくりできるぞ」
「十日!?十日も何すりゃいいんだよ!自首の練習でもしろってか!」
「自首したって警察に説明できんだろう」
「じゃあどうしろと?」
「それは恐らく間もなく・・・・・・来たようだな」
そう言うとわたしは視線を窓の外に向けた。そこには一羽のカラスがいた。首から茶色い小さなポーチをぶら下げている。
「そのカラスがぶら下げているポーチの中身を取れ。それと、何でもいいから食い物も渡してやれ。さもないと噛んでくるぞ」
彼は渋々、冷蔵庫からベーコンを一切れ取り出し、カラスに渡すと同時にそのポーチから中身を取り出した。
そこにあったのは手紙だった。真っ赤な封蝋が目立つ。
「なんの手紙だ、これ?」
「招待状さ」
「招待状?」
「ああ、魔術師たちが集められ行われる『儀式』への、な。だが、誰が出席するかを書かねばならん。そういえばまだ聞いてなかったな。小僧、お前の名は何だ?」
「
「明星進だな?」
わたしはそう言うと、手紙に魔術で文字を書き記した。彼の名前を。そしてその横に、『任命者』として、わたしの名前を。
「これは・・・・・・お前の名前か?なんて書いてあるか全然わかんねえけど・・・・・・」
「そうだ。名乗りもまだだったな。わたしの名は・・・・・・とりあえずは『シア』でいい」
「とりあえず?まるで偽名みたいだな?」
「まあ念のため、だ」
二人の名前を書いた手紙をカラスのポーチに入れてやると、カラスは飛び去った。
それは、これから始まる明星進の、輝き、煌めく、彼にとっては地獄でもあり、義務でもある、そんな物語の幕を開くことでもあった―――――
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