第18話 連携
――Bチーム――
「では成城寺先輩。私達も行きましょう」
リンカ先輩達と別れて、私達Bチームも出発する。
私――神楽楓のチームのリーダーは成城寺高峰先輩で、見た目はちょっと怖いけど今まで話していて凄くしっかり者の真面目な方なんだなという印象を抱く。
それにイチちゃんも居るし、この2人がいる事で私はとても心強い。
私の手元の端末では周辺監視カメラの映像と、魔素を映し出すドローンを操作出来る。
このメンバーで私が役に立てるのか心配だけど、頑張ってサポートしなきゃ!
「カエデ君は凄いな。その画面に映っているのは全部把握してるのか?」
「はいっ! これが監視カメラの映像で、このボタンで切り替えできます。こっちでドローンを操作して――」
軽く画面に映っている情報を成城寺先輩に説明するも、段々と目つきが鋭くなっていくのを見ると機械に関しては苦手らしい。
「まあ私がしっかりサポートしますので! 成城寺先輩とイチちゃん! と……獄門先輩は安心していいですよ!」
「頼りになるな。ゴクモンの奴は無視しても問題ないあいつはああいう奴なんだ」
さっきからずっとウサギ跳びしながら私達を追いかける獄門先輩に、成城寺先輩は冷ややかな目で見つめる。
イチちゃんは相変わらずニコニコとポチを撫でながらも真剣に周りに注意を払っている。
「イチちゃん♡ 一緒に頑張ろうね」
「はい!」
「ワオン!」
可愛い可愛いイチちゃんを後ろから抱きしめて緊張を和らげる。
先輩ばかりになるかと思ってたけど一個下のイチちゃんが居てくれるお陰で私の心はポカポカだよ~。
「あまりふざけてると危ないぞ」
「あっ、すみません……」
成城寺先輩に叱られちゃった。でも真面目な先輩に可愛いイチちゃん! この2人が居れば安心だね!
獄門先輩はリンカ先輩とレスリングしてた時から思ってたけど、なんか頭おかしい人なのかな? あんまり気にし過ぎるとこっちまでおかしくなっちゃいそうだから無視が1番だね。
イチちゃんと手を繋ぎながら、先頭を歩く成城寺先輩の後ろをついていく。
常に手元の端末を操作して警戒はしてるので、何かあったら先輩達と可愛いイチちゃんに守ってもらおう。
私は普段、異能力について研究してる。だから今回の透明になる異能力者について少しだけ違和感があった。
リンカ先輩から聞いた話では相手はAランク上位の異能力者。透明になる能力が強力な異能だからそういう判断になるのは理解出来る。
でもこれまでの事例から、ランクが高く強い異能を持っている人ほど纏っている魔素が濃い事が判明してる。つまり異能を発動した時に大きな魔素の痕跡がその場に残る。でも周辺をドローンでざっと調べてみたけど、目立った魔素の痕跡は見つからなかった。
これまで見た中で最も濃い魔素を纏っているのは当然A4のイチちゃん。2番目がリンカ先輩。
透明になる能力が実はそこまで強力じゃないなら分からないけど、Aランク上位ならイチちゃんより濃い魔素を纏った人間が現れるはず。
これだけ魔素の痕跡を残さず何度も犯行を行っているという事は、きっと犯行に手慣れている。
『こちらAチーム。怪しい反応を見つけたから今から接近する。何かあれば再び連絡します』
考えを深く巡らせていると、端末からカケル先輩の通信が届く。
「どうやら何かあったみたいだな」
「はい。カケル先輩から位置情報が送られてきたので念のため近くに移動しましょう」
カケル先輩から反応した魔素の写真も送られてくる。
……この魔素はあまり濃くない。でも犯人である可能性を考慮して、すぐ駆け付けれるよう周辺へ向かう。
「その場所か! よしすぐに行こうじゃないかァ!!」
「あっおい! 獄門待てっ!!」
位置情報を確認した獄門先輩が物凄い速さで駆け出していった。蹴った地面がえぐれている。
これはまずい。連携が大事だからチームで別れたのに1人突っ走っていっちゃえば連携が崩れてしまう。
「クソッ……やはり筋肉ダルマは言う事を聞かない……! あの馬鹿……!」
「わあ、早い」
「ワフッ」
あの速さで行ってしまえばもう追いつく事は出来ないだろう。成城寺先輩は諦めた様子で頭を抱える。
「こ、こちらBチーム……先程の通信を見て獄門先輩がそっちに向かっちゃいました……」
一応Aチームに情報を伝える。何かあれば返信が来るはず。
「ひとまず私達も行きましょう」
「そうだな……」
「ワンワンワン!!」
――Aチーム――
氷坂凛華、斎木翔、糺明院聖愛、扇雀累。+獄門凶寺。
「まずい筋肉馬鹿が暴走した!!」
リンカがBチームからの情報を聞いて慌てる。
このまま獄門さんが暴走して魔素反応を出した人間に攻撃を仕掛けてしまうのは良くない。もしもその反応が一般人による物だった場合は一般人を攻撃してしまう事になり、犯人だった場合も獄門さんだけでは逃してしまう可能性がある。
「僕が止めよう」
静かだった扇雀さんが声をあげた。
「Bチームの位置、対象までのルート、ゴクモンが通る位置、通信からの経過時間……あそこだ」
扇雀さんが指を差した方向。建物と建物の隙間を縫って遠くの方に、雑居ビルの壁を走っている獄門さんが空中で静止していた。その距離およそ300m先。
「助かった!」
それを見たリンカが即座に飛び去り、建物の間を駆けて空中で静止している獄門さんを凍結させた。
全身凍ったまま落下する獄門さんをリンカは抱えながら僕達の元へ戻ってきた。
その圧倒的な連携プレイに思わず息を呑む。
何より扇雀さんは今の一瞬で獄門さんが視界に入る瞬間を見極め、一瞬しか姿を現さない獄門さんを狙って異能を発動した。まさに神業と言っていい。
それと同時に、そんな扇雀さんがリンカ殺害を企てている事が更に恐ろしく感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます