第15話 ユーチューブに限定公開
(『ほほえみ』動画は、ユーチューブに一般視聴者が観ることが出来ない限定公開でアップロードした。それは、関係者がいつでも観ることができるようにするために)
(ユーチューブの動画の中では、いつまでも若々しいケンとナミが、輝いている。そして、『ほほえみ』動画ファイルを、サーバーから削除しない限り、永久に輝き続ける)
(フィルムだったら、部屋を暗くして上映。上映が終了したらリールにフィルムを巻き取らなくてはいけない。その点、ユーチューブは、いちいち巻き取ることもしなくていいし、フィルムに傷が付く心配もなく何回でも視聴できるんだ。おまえの時代は、何もかも、しんどかったな)
(年賀状で繋がっていた大学の映画研究会のみんなには、連絡できた。そして、みんなは喜んでくれた。みんなには、お礼が出来た)
(ふと思う。郁子さんは、果たして、実在していたのだろうか? と。いや、高座で落語を演じる彼女を、この目で見つめたのは事実のこと。たしかに、彼女は、存在していたんだ。彼女は、幻なんかではなかった)
(しかし、彼女は、映画『ほほえみ』が完成すると同時に、あたかも消えるように、おまえの前から、いなくなってしまった。それは、映画の製作中は、撮影のために彼女がおまえのところに来てくれていたから。そして、撮影が終わると彼女は、おまえのところに来る理由が無くなったから。さらに、おまえの方から彼女に会いに行く正当な理由は無かったし、彼女と直接に連絡をとる方法も無かったから)
(長い年月の経った今、映画『ほほえみ』を、特に観てもらいたかった彼女と連絡がとれない)
(この『ほほえみ』動画の限定公開のURLを、彼女に伝えるだけでいいのに、ただ、それだけでいいのに)
(たとえ、彼女が日本にはいないとしても、インターネットのおかげで全世界で、この『ほほえみ』動画を共有して視聴できるのに)
(そして、インターネットのおかげで、おまえには考えられないほど、手軽にコミュニケーション出来る世の中になったのに)
(でも、おまえの思い込みの彼女への連絡方法もあんな状態だったし、その後、何等かの方法で彼女と繋いでおけばよかったのに…… 相手は、女性だからそれは無理か…… それに、今となっては…… )
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『ほほえみ』動画を公開しました。
URLは、https://youtu.be/6uNIwpjnqwsです。
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