第5話 女優探し

◯M川女子大学映画研究会の部長に直談判

 以前、M川女子大学映画研究会の作品、観たことあったけど、切り絵を少しずつ動かしてコマ撮り撮影している女子らしい、丁寧なアニメーションだった。

映画『ほほえみ』のナミ役のような、汚れ役を演じる女子を期待するのは場違いのような。

そもそも、僕の個人的な依頼で、M川女子大学映画研究会に協力してもらうことは許されることなのだろうか? 1回生なのに出過ぎた真似では?

などなど、不安要素は、いっぱいあった。


 まず、僕は、『出演お願い電話』のシナリオを作った。

そして、日曜日の夜、外の公衆電話に走った。

電話の相手は、M川女子大学映画研究会部長の友子(ともこ)さん、僕より一つ歳上だ。

失礼の無いようにしなくては。

 「もしもし、夜分、恐れ入ります…… 友子さん、いらっしゃいますか? 」

友子さんが、電話口に出るまで待つ。

 「昨日、こちらの渉外の者からお話したと思いますが」

一拍置く。

 「あの、、、映画に出演して頂きたいという件です」

間をとる。

 「勝手なお願いなんですが」

一拍置く。

 「シナリオは、郵送してもいいのですが、代表の方にストーリーの説明をして」

一拍置く。

 「その上で、代表の方が部内で説明してくださって」

一拍置く。

 「協力してくださる方がいたらお願いしたいと思うのです」

間をとる。

 「面倒くさいようですけど、気が向かないのに無理に出演してください、とは言いません。駄目なら困りますが…… 」

 (おい、人にものを頼む時の言い方じゃないぞ)


あと、条件としては、撮影場所のO阪N波に通うことが、簡単に出来る人が良いということも、付け加えた。

さらに、夜の撮影は無くて、夕方には、その日の撮影は終了することも。

 (ノーギャラ、交通費無しで、カメラの前に立って演技してくれる女優が、頼めば誰かいるだろうと思っていたんだ。おまえは…… )


近々、M川女子大学映画研究会とR甲山牧場で春の合ハイ(合同ハイキング)がある。

その時にシナリオを渡してストーリーの説明するのは、合ハイとは別のことなので、駄目。

合ハイ終了後の帰りに個人的な依頼ということで友子さんが僕に会ってくれることになった!

よかったぁ。まず、第一関門突破だ!

 (部長さんが、優しい人でよかったな)


友子さんは、自宅がK戸市なのに、合ハイの後、夜遅くにも関わらず、午後9時にU田で会ってくれた。

僕は、喫茶店で、シナリオを渡してストーリーの説明をした。

 (おまえは、映画『ほほえみ』に自信満々だった)

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