第3話 2回目のデート

◯外の公衆電話

 2回目のデートに彼女を誘いたい。

この前のデートで彼女の家の電話番号を教えてもらった。

彼女の家の電話番号。何時頃に電話したらいいんだろう? 夕飯時は、失礼だし。

夜遅くならないようにしなければ。

そうだ、夜の7時だ。夕飯も終わってるし、まだ、お風呂にも入っていないだろうから。

僕は、おじさんの家に間借りさせてもらっているから、電話するには、外の公衆電話に行かなくてはならない。十円玉をいっぱい持って。

 (今ならなぁ。スマホで気軽に連絡出来るのに。メールも使えるのに、気の毒だな、だけどがんばれっ)


ただ、彼女に会いたいだけ、シナリオ読んでもらうとか、会う理由を作らなきゃ。

でも、電話番号を教えてくれたことは、僕に好意を持ってるし、また会ってくれるということだ。


 「もしもし、夜分、恐れ入ります…… 万里(まり)さん、いらっしゃいますか? 」と僕。


え? よかった! 電話に出たのは、彼女だった。


 「ごめんなさい。今度の日曜日は用事があるの」と彼女。


 「他のシナリオも読んでもらいたくて…… 」と僕。


 「それじゃ、シナリオ郵送してね。住所は、I丹市…… 」と彼女。


すごい! 住所教えてくれるなんて。

僕は、200字詰原稿用紙に100枚書いたシナリオを、大きな茶封筒に入れた。

 (でも、よく考えてみろよ。彼女は、短大だから春には卒業、そして、就職だ。おまえの相手をしている暇も無いはず。ましてや、おまえの映画に出演するなんて不可能だ)


◯間借りしている部屋

 僕は、食欲が無くなった。

そして、寝込んだ。

母屋から、僕のことを心配して、おばさんがお粥を作って持ってきてくれた。

おばさんは、お盆を僕の寝ている枕元に置いて言った。


 「女なんて世の中には、掃いて捨てるほどいるんだよ。いつまでも考えていたらだめだよ」


彼女は、掃いて捨てるような女じゃない。

僕は、ふられてはいない。

彼女は、忙しいんだ。

でも、あれから電話も無いし、郵送したシナリオの返事も来ない。


万里という名前、国語辞書で調べたら『非常に遠い』と書いてあった。

僕は、万里さんには、もともと辿り着けない運命にあるのか?


僕は、後期試験の必須科目も落としてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る