第2話 初めてのデート

◯喫茶店

 彼女は、お嬢様だし、僕より一つ歳上のお姉さんだ。失礼の無いようにしなきゃ。

僕は、大人っぽいお店を選んだ。テーブルの上には、キャンドルの火が揺れている。


 「ホットを2つ」とウェイトレスに僕。


 「私、さっき、コーヒーだったから紅茶にしようかな」と彼女。


僕と会う前に誰かとデートしてきたのかなぁ? まあ、いいや。

お姉さんだからいろいろと忙しいんだ。

 (おまえと一対一で会ってくれているんだからな。感謝しろよ。もっと謙虚になれ)


 「早速ですけど、これがシナリオです」とシナリオを手渡す僕。


にこにこ微笑みながら受け取る彼女。

僕は、相変わらずのGパン姿だけど、彼女は、ベージュのコートを脱ぐと白いブラウスだった。

ああ、大人の女性の美しさに僕は圧倒されてしまう。

彼女は、この映画のナミ役には、合わないかもしれない。

そう、彼女に出演をお願いする自信が無くなってきた。

彼女をナミ役には出来ない。

だって、この映画『ほほえみ』は、麻薬の運び屋のケンと純真なナミとが出逢ってしまう悲恋で、人間不信になったナミが、悪い奴らに乱暴されるシーンもある。

彼女に、そんな役柄は、不似合いだ。


だから、この映画とは関係無く、彼女と、プライベートな、お付き合いをしたい。

(それ、おまえの勝手な妄想だろう。映画製作のこと、忘れるなよ)


◯間借りしている部屋

 デートから帰って来て、シナリオを手に、ぼうっとしている。

彼女、一生懸命にシナリオを読んでくれたなぁ。

そう言えば、彼女、読んでる最中に泣いていたんだ。

僕の、このシナリオを読んで感動して泣いていたんだよ。

なんて優しい心を持った人なんだ。


 (ちょっと待て、今から考えると、彼女、泣いていたんじゃないぞ。目が疲れてハンカチで目を抑えていたんだ。おまえは、おめでたい奴だな)

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