第115話 帝国へ
空中要塞につくとまずはナッカが錬成で先ほど地中に埋めた神器を地上までせり上げ、物見やぐらのようにし、そこを操縦席にすることにした。ここで神器を操作して要塞の上下と質量変化を行うのだ。
だがまだ前後左右の移動をする機能はこの要塞には備わっていない。ということでナッカの錬金魔法で、要塞の四方にプロペラをつけてもらった。これを錬成魔法で回して進行方向を決めるのだ。高速移動したいときは要塞自体の質量を下げてしまえば問題ないだろう。ただしその場合は、風や外敵からの攻撃があったときに影響を受けやすくなってしまうという問題もあるが。
このアジトの移動はナッカのプロペラ操作か俺の”ベクトル付与”のみだ。いずれは誰でもプロペラを動かせるように改造したいが、今はこの二人しか操作できない。帝国に行ったらナッカには要塞の守護を任せることになるだろう。
早速ナッカが作りたてのプロペラを操作して空中要塞の移動を始めた。
「ほう。私とサフランが話し合いをしているときに、こんなもんを作っていたのか…」
アザレアが空中要塞に感心している。
「あ、その剣は。なるほど、これがこの空中要塞のかなめになってるんだ」
「リーメルが戦った神聖騎士団幹部の神器よ。これにフールがロズリッダの魔法を込めてくれたの」
「魔法剣みたいなことか」
リーメルは察しがいいようで、すぐにこの神器のことを理解したようだ。
こうして俺たちはまず地上に降りて、紛争地帯で戦う騎士団とゴーレムスーツ兵を回収した。彼らも帝国へ連れていくためだ。
広場に集まった彼らにアザレアから作戦を発表した。
帝国は奴隷を大々的に農地で働かせることで飽食の国になっている。その奴隷を解放しつつ農地を奪うのが、今回の作戦でのゴーレム兵たちの作戦である。王都から離れた地で迅速に行動する必要があり、軍との衝突はできるだけ避ける。なお農地を冬挿せて奪うのはロズリッダが1日遅れで到着するのを待つ必要がある。
そして騎士団の方は俺について王都近辺にいるであろう、俺のクラスメイトの捜索と救出の手伝いをする。このときできるだけ隠密で行動して、女帝やその側近との直接対決は避ける。
「…という作戦だ。いいな」
アザレアからの説明を受けた兵たちは気合の入った返事をした。
「ではいざ帝国へ出発だ」
こうして俺たちは空中要塞で帝国へ向けて出発した。
ナッカが要塞を上昇させて、雲の上を移動する。神器の力で低気圧の影響は和らいでいるようだ。
「こんな上を飛ぶ必要あるの?」
「まだ嵐の時期だからね。移動を早めるために要塞の質量を減らしてるから、下を飛んだらたぶん横転しちゃうわよ」
「そういえばそういう話もあったな」
葵を誘拐して帝国へ帰る一ノ瀬は、それが理由で空島を経由し、俺はその後を追ったのだった。結局は空島で追いつけずに、こんな大掛かりな準備をして帝国へ向かうことになったが。
こうして数時間の飛行の末、何の問題もなく俺たちは帝国の上空まで辿り着いた。雲の下を移動していたら帝国の人間にバレて何か起きたかもしれないが、空は無警戒だったようだ。
「では地上に降りようか。まずはナッカとゴーレム兵はここで待機。フールと私と、リーメル、ガウ、騎士団で地上の調査に向かう」
ということで俺の空壁で地上に行くメンバーを乗せて、俺は帝国領へ降りることになった。ロズリッダがいたら彼女の能力で降ろしてもらったのだが、あいにく彼女は向こうの大陸に置いてきている。ロズリッダと俺が一緒に来たら、もう片方のチームに浮遊に関するアクシデントが起きた時に対応できないため、ロズリッダは俺と別行動になる必要があったのだ。
「じゃあナッカはここをよろしく。浮遊に不調が出そうだったら、最悪地上に降ろしていいから」
「分かったわ。そのときの連絡用に騎士団員も何人か残しておいてもらうわね」
こうしてナッカに空中要塞のことは任せ、俺はアザレアたちと共に帝国領へと降り立った。
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