第4章 帝国編
第107話 聖教の聖地と神々について
空島での戦いを終えた俺たちは、竜人族を始めとする新たな仲間たちと共に新たな活動を開始することになった。
当面の目標は拠点の引っ越しと残りの紛争地帯の平定だ。聖教が支配する空島を解放し、その支配者だったパレッドを倒したことで俺たちはこれから聖教に目をつけられるだろう。
この大陸には聖教の総本山である聖国や聖教と関りが深い中央王国がある。このまま戦えばなすすべなく敗北してしまう。なので俺たちはこの地から一時離れつつ、革命軍の強化をしなければならないのだ。
拠点へはサフラン、ロズリッダ、ナッカに行ってもらう。ロズリッダの手に入れた重力魔法が白竜の森にある拠点を動かすのに必要不可欠なのだ。その指揮にサフラン、権能の覚醒者の先輩としてナッカがついていった。
紛争地帯はリーメル、ガーネット、メアたち竜人族とゴーレム兵に任せた。竜人族5000人が仲間になった今、紛争地帯の平定はすぐに終わるだろう。聖教や中央王国が軍を興してここに向かうには最低でも3日はかかるらしいので、それまでに平定を終わらせる。
そして俺とアザレアは2人で海に落ちた空島の調査に向かうことにした。具体的には聖教の神殿の内部の調査だ。聖教の幹部の能力に関することや、聖教の目的について知れるかもしれない。
「思ったよりもボロボロだな」
「こっちの本島はメアやロズリッダが支えてないからね」
アザレアを連れてきたのは、彼女が中央王国の魔導士として働いていたからだ。聖教への理解も深いらしいので、この調査に同行をお願いした。アザレアによる紛争地帯の軍の指揮は、もう竜人による数と質で押し切れそうなので不要と判断した。
「女神エルピスの石像だ。これは壊れてないようだな」
崩れた神殿の奥には全長5メートルほどの石像が残っていた。フードを被った人間の石像だ。性別は分からない。フルフェイスの仮面を被ったようなデザインだからだ。そして背中には翼が生えている。天使のようなふさふさしたデザインでなく、ジェット機のウイングのような角張ったデザインだ。
聖女のようなデザインを想像していた俺は、このデザインを見て少しぎょっとしてしまった。
「これが神エルピスか。なんか恐怖を感じる見た目だな。どういう神様なの」
「どういう神かと聞かれたら説明に困るな。滅多に下界に降りてくる神ではないから」
「その言い方だとまるで下界に降りてくる神もいるみたいに聞こえるんだけど」
「いるぞ」
「ええ…」
どういうことだろうか。神がたくさんいるということなのだろうか。そういえばパレッドが信仰している神はエルピス神とは違うと言っていたな。
俺は下界に降りてくる神とやらについてアザレアに詳しく聞くことにした。
「まずは聖地について説明しようか。この世界は北の大陸と南の大陸に別れている。南の大陸が中央王国や聖国があるこの大陸…」
「それで北の大陸が。これから向かう帝国や魔族の国がある大陸か」
アザレアはその通りだと頷いた。他にも獣人が住む大きな島なんかもあるらしいが、大きな大陸はこの北と南の二つなのだとか。アザレアは剣の鞘を使って地面に世界地図を描きながら説明してくれる。
「そしてこの二つの大陸の間にある島。ここが神々が住まう”聖地”と呼ばれる地だ」
「天界とかじゃなくてこの地上に住んでるんだ。しかも神々ってことはやっぱり何柱もいると」
「そうだ。神の中にはこちらの大陸、いわゆる下界の見学にくるもの好きもいる。5年ほど前に中央王国の王都に来たこともあったな」
「そんなフラッと来ることもあるんだ。思ったより庶民的な神様もいるもんだ」
しかし下界に神が来ることがあるのなら、かつて俺が奴隷施設に落ちた時にサフランやリーメルが俺を神だと思ったというのも合点がいく。
「フラッとではないがな。下界に来る神々には、聖教の神聖騎士団から大量の護衛がつけられるから」
「となると聖教の印象が大きく変わるなぁ」
聖教は神を崇めて心の拠り所にするただの宗教ではなく、神のために下界で働く組織という側面もあるようだ。
「じゃあこの空島の支配もその神々の指示かもしれないな」
「その可能性はある。この話を聞いて、この革命軍が相手にした者たちの強大さを、総司令であるお前に理解しておいてもらいたい。慎重に動かなければすぐに消されるだろう」
話のスケールが思っていたより大きくて板が痛くなってくる。そんな俺を置いてアザレアは神殿内の他の場所の調査を始めた。
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