第106話 新たな仲間たち
「ええ…」
竜人族5000人を俺の革命軍に全員入れるつもりなの。
思っていたよりも重い提案だった。パレッドが傭兵として使っていた竜人族をそのまま俺が奪ったみたいになるではないか。
俺は助けを求めるようにサフランの方を見たが、どうやら彼女はもう竜人族たちを統合する気でいるようだ。彼女たちの中ですでにある程度の話はついていたのだろうか。
「これは竜人族の正統なる王家の人間である彼女の承認もあります。ねえメア」
「はいなのです!これならまだフールたちと一緒にいれる!」
「え、メアが王家の人間?どういうこと?」
俺の理解が追い付かないまま話が進んでいく。気づけば他の竜人たちもターニャとメアの存在に気づいてこの場に集いつつあり、全員がメアの言葉に耳を傾けている。
「実はメアが本当のお姫様だったらしいのです。それでターニャ様がメアの代わり…」
「メア、様呼びはもうダメと言ったでしょ」
「そうだった。ターニャ姉がメアの身代わりをやってくれていたらしいのです」
集まった竜人たちが驚きの声をあげている。どうやら本当に一部の人間しか知らない事実だったようだな。そこまでして守った王家の血をパレッドに消されることがなくて本当によかった。
「仲間になるとしても、他の竜人たちの了承は得なくていいの?いくらお姫様だからって勝手に決めたらまずいんじゃ」
ナッカがメアに苦言を呈した。いくら王族といえど一つの種族の身の振り方を勝手に決めるのはよろしくないと思ったのだろう。俺もそう思う。
そこでメアはこの場で勝鬨も兼ねて民に問うことにしたようだ。
威厳を出すためか、再び権能によって黒竜に変化する。竜人たちがざわめいた。
「聞け!メアは竜人族の正統なる王家の血を継ぐものメア。指導者パレッドの20年の支配は、この革命軍たちの助力もあって終わらせることができた。メアたちの勝利だー!」
竜人族たちから歓声が上がる。そしてメアはさらに話を続ける。
「これから竜人族は革命軍に力を貸すのです。メアたち竜人のように助けを求める人たちを革命軍と共に救いにいくのです!」
竜人たちはさらなる歓声を上げた。権能を覚醒させた姫と、その姫が信じる革命軍のために戦いたちと大半の竜人たちが考えてくれたようだ。
これにて竜人族5000人が革命軍に参加することになった。ちなみに紛争地帯の北部で平定した部族たち2000人も参加してくれることになっていたようだ。
「一気に戦力が増えた」
「だが聖教ってのとこれからも戦うんなら、これでも足りねえかもしんねえな」
「聖教?パレッドたちは聖教の人間だったのですか」
リーメルとロズリッダの会話にサフランが反応した。
俺たちはサフランに、空島を支配していたのが聖教の神聖騎士団だったことやパレッドがその神聖騎士団の近衛と呼ばれる幹部だったことを説明した。
「聖教というと世界中に影響力を持つ組織ですが、それが世間から隠れてこんな非道なことをしていたとは。他にも余罪がありそうですね」
「世界を平和にするなら聖教と戦うことになるってこと?」
ガーネットの質問にサフランは頷いて肯定した。
「こちらの大陸は聖教の総本山の聖国に、聖教と協約を結ぶ中央王国があります。今の我々ではすぐに消されてしまいますね」
「じゃあどうするの」
リーメルの問いにしばらく間を置いて考えをまとめてからサフランが結論を出した。
「ロズリッダ。あなたが手に入れた権能で再び島を浮かべることはできますか」
「ん?ああ。練習すればたぶんできそうな感じはするが」
「ではその権能で白竜の森から拠点を移しましょう。移動要塞も一緒に動かしたいですね。目的地は聖教の影響が比較的少ない北の大陸です」
サフランは今のままでは聖教に潰されると判断して、拠点ごと北へ向かおうと考えたようだ。そこでまた今回のように戦力を増やして、聖教との戦いに備えるというわけだな。
そして北の大陸といえば…
「じゃあ次の俺たち革命軍の標的は帝国になるわけだ」
一時は一人で向かおうかと思っていた帝国に、革命軍の仲間と行けるわけか。これほど頼もしいことはない。
「みんなで帝国に行くのです!がんばるぞー!」
メアの声が落ちた空島に響き渡る。
こうして俺たちの空島での戦いが終わり、いよいよ俺は因縁の帝国へ帰ることになるのだった。
★★★
これで3章は終わりです。次回からいよいよ帝国編が始まります。
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