万能の付与術師は無双する~クラス転移されて追放&奴隷化された俺は気づいたら最強になっていました。救った奴隷たちが作った革命軍のボスになったので、この世界に反逆したいと思います~
第98話 vs.魔眼の女幹部 sideメア
第98話 vs.魔眼の女幹部 sideメア
この居住区に攻め込んできた神聖騎士団を指揮していた女幹部のレンダ。メアは彼女に先制攻撃を決めて戦闘を始めたものの、初撃以降まともに攻撃を当てられていない。全て回避されてしまっている。
「くそっ!なんで当たらないのです」
「全部見えてるんだよ。お前の次の動きはな。ほら、次は右足の蹴りだろ。そして左腕の手刀。その次は炎魔法を吐くつもりか」
レンダはメアの次の攻撃を言い当てながら攻撃を回避している。そしてそのたびにカウンターを入れ続けられ、メアはすでにかなりダメージを受けてしまっていた。
「心を読んでいるわけでもない。まさか未来を見ている…?」
「ほう…」
メアは自分の攻撃が読まれる原因が、敵の魔眼の性能のせいであると分析した。器用に心を無にして攻撃することも試したが、それでもなお動きが読まれたので、この結論に至ったのだ。レンダの反応からしてもこれは事実だろう。
だがこれが分かったからと言って何か対処ができるというわけでもない。
「分析したのは大したもんだ。だが数秒先の未来が見える相手と戦ったことはないだろう」
レンダがメアの腹を蹴り上げ、メアはコロコロと地面を転がる。追撃を入れようとするレンダ。メアは防御の準備をする。
しかしレンダは追撃をやめて突然立ち止まると、何やらぶつぶつと喋り出した。この隙にメアは立ち上がる。
「ん?これは…ゼルドリックが殺されたのか。中々強力な援軍を連れてきたようだね」
レンダはメアの方を見ているが、メアに視点が合っていない。どこか遠くを見ているようだ。口ぶりからして千里眼のような能力で他の戦場を見ているのだろう。
「リーメルたちが敵を倒してくれたのか。メアも頑張らないと」
「私の最高傑作の操り人形を壊して、ただで済むと思わないことだね」
実はリーメルとロズリッダが2人がかりでなんとか倒したゼルドリックは、このレンダが魔眼の力で操っていた傀儡だったのだ。本来ならレンダが魔眼で操ろうとすると対象は自我を失ってしまうのだが、このゼルドリックは操られながらもある程度の自我が残ったため、他の傀儡とは桁違いの戦闘力を持っていた。まさに最高傑作。
それを壊され、怒りを露わにしたレンダの魔力が膨れ上がる。
次の瞬間、周囲の建物の隙間から10人以上の竜人が武器を構えながら現れた。
「みんな!…違う」
一瞬味方の援軍が来たのかと思うメアだったが、彼らの虚ろな目を見てその考えを改めた。
そして予想通り竜人たちはレンダではなくメアに向かって剣を振り下ろしてきた。やはりレンダに操られている者たちのようだ。
メアはすぐにその場から飛びのいて攻撃を回避する。
「みんな何をしてるのです!早く正気に戻って!」
「無駄だよ。言葉で正気に戻るほど、私の魔眼はやわじゃない」
メアは操られた竜人たちの攻撃を回避するが、反撃を出れずにいた。操られていても彼らは仲間なのだ。
とうとう全ての攻撃をさばききれなくなり、メアに致命の一撃が振り下ろされそうになる。
「しまった!」
「終わりだね」
そこへ一人の女竜人が飛来した。その長く白い髪をなびかせながら、メアにたかっていた全ての竜人を剣で蹴散らす。竜人の姫ターニャだ。
「ターニャ様!」
「戦場で甘えた考えはやめなさいメア。たとえ仲間でも、自分に剣を向けてきたら容赦はしないこと」
助けれらたと思ったらまた怒られてしまった。ターニャはしばしばメアを怒ってくるのだ。
「はいなのです。それは分かったから、ターニャ様は早くここから離れて安全なところに」
メアは地面に倒れながらターニャに警告をする。姫であるターニャがこのレンダの元に来るのは危なすぎる。
「もうこの島に安全な場所なんてありませんよ。それに私は、あなたを助けるためにここに来たんですから」
「え?」
姫であるターニャがわざわざその護衛の自分を助けるために危険を冒して一人でこんなところまでやってきた。なぜ自分にそこまでしてくれるのか疑問に思うメア。
「姫さんが自分から出向いてくれるとはね。あんたを殺せば戦況も一気にこちらに傾き、聖教を脅かす【力の権能】の覚醒も防げて一石二鳥だ」
レンダが魔法を発動して両手に炎を纏わせた。彼女の闘気はそこまで強力ではないが、あの炎の手刀なら竜人の皮膚をも容易く切り裂けそうだ。
「私の後を追って仲間がここに向かってきています。ひとまずそこまで下がりますよ」
ターニャの指示に従ってメアは起き上がり、後退の準備をする。
「なんで姫が…」
「いいから早くいきますよ」
焦った様子のターニャを見て、リンダが不思議そうに首をかしげる。そして驚いた様子で目を見開きながら、笑みをこぼす。
「ほう…そういうことかい」
また周囲から操られた竜人の増援が来た。ターニャはそれを撃退しようとするが、メアはその竜人たちが何やらブツブツと唱えていることに気づいた。
「ターニャ様、ダメ!そいつらは自爆するのです!」
次の瞬間、詠唱を終えた竜人たちがターニャの目の前で大爆発を起こした。爆炎と土埃でメアの視界が隠れる。
風ですぐに煙が晴れると、ターニャは半竜化をして立っていた。自爆を受けても大きなダメージは受けていないようだ。以前ウエストタウンでイチノセに操られた自爆人間の攻撃をメアが防いだ時と同じだ。
自分と同じくらい強いターニャがこれくらいでやられるわけはない。心配しすぎだったかとメアは安心した。でもこれ以上無理させるわけにはいかないから、自分がちゃんと守らないとと思いメアはターニャの元に駆けだした。
しかしここであることに気づく。
「あれ?レンダがいない」
メアとターニャの正面にいたはずのレンダの姿がなくなっている。てっきりターニャに奇襲をしかけると思っていたのに。
「メア!危ない!」
突然目の前のターニャが駆け寄りメアを押し飛ばした。
「いたた。一体何…を…」
吹き飛ばされてすぐに起き上がったメアは、視界に入ってきた光景が信じられなかった。右目を閉じたせいでおかしなものを見ているのだろうか。
先ほどまでメアが立っていた場所にターニャとレンダがいた。
そして、レンダの炎の手刀がターニャの胸を貫いていた。
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