第79話 空島へ
「では早速空島に向かいましょうか。革命軍もこちらの作戦を手伝ってくれる方を集めてください。アルトとメアは浮遊石の準備を」
サフランに回復魔法をかけてもらったアルトは、ターニャさんの指示を聞いてメアと共にすぐにどこかへ走り去ってしまった。
「浮遊石ってのは?」
「パレッドの重力の権能が込められた石で、魔力を込めることで空島と地上を行き来することができます」
「なるほど。その石じゃないと空島にはいけないわけですね」
空島へ行く手段はこれでどうにかなるな。メアたちに続いて俺たち革命軍も行動を始めなければ。
「サフラン、革命軍と竜人の戦闘はどうするの」
竜人傭兵は指導者パレッドのせいで無理やり働かされているだけで、その上これからターニャさんやメアが革命軍と共に反乱を起こすとなればもう戦わなくていい気がする。
「残念ですが反乱の気配をパレッドに気づかれるとまずいので戦闘はこのまま続けます。なので私はその治癒をするために地上に残るつもりです」
両陣営からそれなりの被害が出るだろうが、この作戦の成功のためには戦闘を続行するべきなようだ。どうやら竜人の中にはパレッドの直属の部下が入っていて他の竜人を監視している可能性があるのだとか。パレッドに反乱がバレたら作戦の成功確率が下がるし、空島にいる人質の命も危険にさらされる。
ターニャさんもこの犠牲を悔しく思っているのか眉をひそめている。
そこで俺は被害をできるだけ抑えるために、ある提案をした。
「じゃあ俺の付与でこの戦場の全ての人の守備力だけ上げていこうか」
「そんなことができるのですか!?」
「俺の権能は付与に関するものなので」
ターニャさんは驚いた様子で聞き返してくるが、サフランは当たり前のこととして受け止めている。
「それはいいアイデアですね。では早速お願いします。私は空島に向かうメンバーを集めてきます」
サフランの許可を得て俺は飛び立った。先ほどメアに蹴り飛ばされたときに落としたリベリオンも”ベクトル付与”で回収しながら。
盗賊ドドガ、魔法剣士アザレア、海賊ルスキュールとの戦いを経て、俺は自分の付与術の射程距離を延ばすことに成功した。今までは半径40メートル以内の対象にしか付与をかけれなかったが、今なら半径200メートルはいけると思う。
だがこれでも1キロメートル以上に渡って展開される戦場をカバーするのは不可能なので、空を飛びながら付与をばらまいていく。
先の戦いで無限の魔力を取り込んだリベリオンから魔素が垂れ流し続けているので、以前よりも”魔力付与”による魔力回復の速度も格段に向上している。
こうして数分以内に戦場とその周囲に潜む人々への付与を終えた。数時間は効果が持つだろうから、それが切れるまでに空島での任務を終えたいな。
こうして俺は再びサフランと合流した。
「ただいま。全員を強化してきたから、よっぽどこのことがなければ死にはしないと思う」
「ありがとうございました。こちらも空島に向かうメンバーを集めてきました」
サフランの元にはリーメルとナッカとロズリッダとガーネットとガウがいた。オークションに向かったメンバーにナッカとロズリッダを加えた形だな。
地上にはサフランとアザレアだけが残るということか。治癒、ゴーレムの指揮と地上で役割があるメンバーだな。アザレアがいればたぶん地上の戦いは問題なく進むだろう。
「ナッカも連れてって大丈夫なの。ゴーレム兵の管理とかは」
「私の作品はそんなやわじゃないから大丈夫よ」
ナッカがそういなら大丈夫だと信じよう。それにしても俺の付与と違って一度発動したらずっと残り続けるというのは便利で羨ましいな。
「あとさっきリーメルの魔法剣を見せてもらったんだけど…」
「あー、あの回復魔法を込めるやつな。ナッカなら魔法を込め直せないの?」
リーメルがドドガ盗賊団のルギンのアジトで盗んできた魔法剣は回復魔法を込めることができる貴重なものだったが、オークションでの戦いのときにルスキュールに斬られた俺の腕を治癒する時にその効果を使い切ってしまった。
これに回復魔法を再補充できる人材はこの世にそう多くは存在せず大変貴重なのだとか。
「私じゃできないんだけど、フールの付与魔法ならできるんじゃないの?そういうの得意そうだけど」
「あ、そっか」
俺の付与ならたしかにできそうだ。なぜこれを考え付かなかったのだろう。
こうして俺はサフランの回復魔法をリーメルの魔法剣に込めた。サフランは地上に残るので、この魔法剣は空島での貴重な回復手段だ。
「私は一緒にいけないので、この回復魔法を役立ててください」
「ありがとうリーメル。地上は任せる」
リーメルがサフランに礼を言ったところで、メアとアルトが戻ってきた。
「皆さん移動の準備が出来ました。いつでも出発できます」
「大変だったのです…」
「ではいきましょうか。サフランさん、地上の竜人のことはお願いします」
「ターニャさんたちもお気をつけて」
こうして俺たちはサフランの元を後にした。
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