第76話 アザレアの加入
突然の勧誘に戸惑っているアザレア。
「私を仲間にだと?」
「もう王国に居場所もないだろうし、入ってくれるかなと思って。オークション船のときも勧誘しようとしてたんだけど、家族のことを解決してからの方がいいかと思って後回しにしてたんだ」
今の革命軍には力が足りない。アザレアが中央王国の最高戦力ではないということを聞いてそれを痛感した。
その中央王国との戦力差を埋めるのにアザレアはうってつけだ。無限の魔力を使わなくても闘気でリーメル並みの動きをしていたし、彼女には中央王国と戦う理由もある。
「自分を利用した中央王国に恨みもあるだろうし、革命軍に入ったら一緒に家族を守れるぞ」
唐突の勧誘に気持ちの整理が追い付かないようで、目を閉じ胸に手をあて深呼吸をして、落ち着いてからアザレアは返事をした。
「外堀から埋められてなんだか複雑な気持ちだが、別に断る理由もないな。ぜひ一緒に戦わせてくれ」
こうしてロズリッダに続いてアザレアを仲間に入れた。
実は元からアザレアは俺たち革命軍の活動に感銘を受けて仲間に入りたかったらしいが、オークションで攻撃をしかけた手前自分からは言い出せなかったようだ。
こうして新たな指揮官を得た俺たちは任務を続行する。
正式に仲間に入れたアザレアにゴーレム兵の指揮を取らせることで、竜人族に襲われる他の部族をより迅速に救助することができた。
いきなり全体で統率を取らせようとするのではなく、まずは3人で連携をとらせているようだ。小さな変化だが、先ほどまでの連携なしの特攻より格段に集団として強くなっている。
そういえば帝国の訓練のときも3人組を作らされたな。葵が誘ってくれて楠木さんを含めた3人組で訓練をしたんだっけか。あの3人組を基本にして戦争で集団戦をやらせようとしていたんだな。
「ゴーレム兵の指揮をとれる奴がいないからって捕虜を仲間にするとか。ぶっ飛んでんな」
「元から勧誘するつもりだった人が軍の指揮もできる人材だったんだけどね。ロズリッダも軍で働いてたなら指揮とかできてもいいんじゃないの」
「俺は切り込み隊長だったからな。そういう頭を使うことは他の奴に任せてたんだ。それじゃあそろそろもうひと暴れしてくるぜ」
小休憩を終えたアザレアが再び戦場に戻っていった。
アザレアは人魚の国で兵士をやっていたという話はしてくれたが、一体何があってドドガ盗賊団のオークション船に捕まっていたのだろうか。その辺りもまた後で聞いてみよう。
それにしても集団戦の指揮官を仲間にできたのはありがたいな。この作戦もそうだし、スラムにあるドドガのアジトを数十人で奇襲したときもそうだが、サフランは作戦が大雑把すぎるんだよな。俺が代替案を出せるわけでもないから文句は言わなかったが。
これからは戦いのことはアザレアに任せて、サフランには全体の管理などを行ってもらおう。
アザレアとロズリッダに戦場は任せて、俺は戦闘不能になった竜人を捕らえて話を聞くことにする。若い男性の竜人だ。
「えっと何を聞けばいいんだっけか。お前たち傭兵は誰の依頼でこの紛争地帯を襲ってるんだ。この紛争地帯に住む人々に傭兵を雇う金なんかないと思うんだけど」
「俺たちは指導者様の指示で傭兵家業を行っている。それだけだ」
「その指導者とやらは誰から依頼を受けてるの?」
「そんなの俺が知るかよ」
ふむ。サフランはこの指導者に依頼を出した人物を黒幕だと予想しているようだった。こいつのせいで紛争地帯の人々が大量虐殺されていると。しかし末端の兵ではその情報を持っていないようだな。
「じゃあ次の質問。俺を空島まで連れて行ってくれないか。知り合いが誘拐されちゃって」
「無理に決まってんだろ。そんなことをしたら俺もお前も指導者に殺されちまうぞ」
やはり断られるよな。この紛争地帯に来るまでに移動要塞にも寄ったし、高確率で一ノ瀬と葵は竜人を操って空島にすでに向かっているだろう。指導者に殺されていないことを祈りつつ、俺も早く追わないとな。
葵の安否も心配だし、楠木さんの石化も一ノ瀬に早く解かせないといけない。
出発前にサフランに診てもらったところ、あれは呪いに近いものらしく、サフランの回復魔法でも解除はできなかった。並みの聖職者でも解けない強力な呪いらしいので、かけた本人の解除させるのが一番手っ取り早いらしい。
「じゃあその指導者とやらの情報を…」
「断る」
何を聞いてても答えてくれなさそうだな。
正攻法で連れて行ってもらえないないなら、脅してでも連れて行ってもらうぞ。
俺はリベリオンに炎を纏わせて竜人の首元に向ける。
「連れて行ってくれないなら、お前を生かしておく意味もないな」
「好きにしろ」
迫真の演技で脅迫したが竜人は全く怯まなかった。
誇り高き竜人の気質だろうか。それか自分の命なんかより守りたい命があるのか。そういえば家族を人質に取られていたアザレアに近いものを感じる。喪失感のような、自分の命は諦めつつも他に未練がありそうな雰囲気だ。
「もしかして誰かを人質に取られてるとか…」
「その手をどけるのです!!」
青年に質問をしようとしたとき、後ろから女性の叫び声が聞こえた。次の瞬間、俺の背中に衝撃が走り前方に吹っ飛ばされた。
”ベクトル付与”を使って空中で体勢を立て直して着地して、元いた場所を確認する。そこにはさきほどの竜人の青年をかばうようにしてメアが立っていた。
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