第22話 俺の相手は…
実質無限の魔力に、”付与術”の範疇ならなんでもできる万能の能力。
もう誰にも負ける気がしない。
威力が上がったサフランの回復魔力によって、ゴッダさんの傷がみるみるうちに塞がっていく。
「うう… 俺はまだ生きて…」
「パパ!よかった無事で。ありがとう二人とも!」
ゴッダに抱き着いたナッカが次に俺とサフランにも抱き着いてきた。
だが胸の感触を堪能している暇はない。
「泣くのはこいつらに勝ってからにしよう。ナッカは少し離れたところに錬成魔法で壁を作って、そこでゴッダさんや怪我人を守ってくれ」
「分かったわ!」
「そこで私は怪我人の治癒をすればいいんですね。任せておいてください!」
俺は二人に”魔力付与”と”状態異常耐性付与”を施して、魔法の力を底上げさせる。ナッカはゴッダさんを支えているので、俺が抱えているリーメルはサフランに任せた。
「さて、俺の相手は…」
「貴様を倒せばこいつらの異常な力も元に戻るのか!」
先ほど他の騎士から隊長と呼ばれていた、ひと際意匠の凝った鎧の騎士が”粘性付与”や奴隷たちをものともせずに迫ってきた。
これは強そうだ。こいつの相手をしている暇はないので誰かに任せたいが、少し強化した程度の奴隷たちでは無理だろう。
今の戦況は軽装の看守相手にはそれなりに戦えているが、訓練された騎士相手には数の力でなんとか互角といった感じだ。隊長騎士を相手にする余裕は彼らにはないだろう。
「俺がやるしかないか…」
「待ってジュウリ。私が戦ってみる」
俺を制止したのは意識を取り戻したリーメルだった。サフランのとこから駆けつけてきたのだろう。
先ほど地下の魔素溜まり事件にて、すでにかなり魔素を吸収してしまっていたリーメルには、”状態異常耐性付与”をした後にさらに”魔力付与”で体内から魔素を取り除くという応急処置を施しておいた。
それによって一命は取り留めたものの意識が戻るか心配していたのだが、まさかこんなに早く復活するとは。
「大丈夫なのかリーメル。というかお前その力…」
「なんかさっきから力が湧いてくる。あいつの相手は私に任せて」
なんとリーメルは闘気を使いこなしていた。
魔素を致死量取り込んだ上で死の淵から復活したことで、闘気の才能が開花したのだろうか。
俺だけでなく彼女も、地下の魔素溜まりを経て強くなってしまったようだ。
これは魔素溜まり様様だな。
「じゃあ任せたぞ」
「うん。私の剣は短めの2本がいい」
他の奴隷が持っている剣が俺が作ったものだと瞬時に見破ったのか。
俺は”形状付与”で土の剣を2本作ってやり、さらにリーメル本人に”身体能力強化”と”攻撃・守備力強化”もかけてやる。
通常ならこの2つの強化付与は闘気使いへの重ね掛けは効果的ではないと、帝国の教官に習った。
だが今の俺には魔力の制約がなくなったので、大量の魔力によるごり押しで効果的な重ね掛けを強行することができる。
「無理そうだったらナッカたちのとこまで下がれよ」
「分かった」
こうして騎士の隊長とリーメルとの戦いが始まった。
これでやっと俺は自分の相手に集中できるな。その相手とはもちろん…
ガラリッ
俺の視線の先の瓦礫の山が崩れる。
その下から出てきたのは俺にとっても、サフランとリーメルにとっても因縁の相手。A級冒険者の人狩りグルフだ。
「油断したなぁ。まさか奴隷にこんな力があるとは」
「さっきの不意打ちは大して効いてないか。これは倒しがいがありそうだ」
余裕そうに服の埃を払う人狩り。闘気のおかげで相当頑丈なようだな。
「奴隷のくせに舐めた口を… ってかお前空から降ってきた奴か。この前俺にボコされたのをもう忘れたんなら思い出させてやるよ」
「前までの俺とは別人だと思った方がいいぞ。負けた時に後悔したくないだろ」
表情からして人狩りはすでに俺をただの奴隷ではなく敵と評価しているようだが、一応警告煽りをしてみた。
さてこの施設にきてすぐにこいつに絡まれたときは一方的にボコられたが、今の俺ならどれくらい戦えるかな。
人狩りとの再戦が始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます