15.リバイブ
そういえばアイスハートなんて縁起の悪い名前よく考え付いたよなあ。心停止を予感させるようなIDだった。
自分の記憶が無くなってしまうという事実を未だに受け入れたくない。怖くてしかたないけど、考えても前に進めない。
結局余ったお金というのは、幽界で子供の医療費をサポートしている団体に寄付した。
アビスのみんなは生き返りとかではなく、幽界に飽きるまで新しい人生を遊ぶらしい。
そういえば、ニューエイジはドーピングや八百長などは発生したが、大会自体はかなり成功したらく、今や幽界では大流行しているらしい。日本プレイヤーだとライトさんが一番人気だとか。
沢山経験をした。どれも今までにない物だった。
ゴスロリ服を着させられたり、ドラグナさんと撃ち合えたり、麻薬組織を壊滅させたり。ムギさんから手紙を貰ったり。藤野さんみたいな人と一緒にプロ選手として活動したり。
新幹線の中で窓の外から宇宙を眺めていた。ムギさんも同じ景色を観たのだろうか?初めの内は奇麗で見惚れていたが、ずっと観ていると流石に飽きる。
窓に映っている俺の顔は泣いているように見えたし、笑っているようにもみえた。生き返ったらどうなるのだろう?
とりあえず就職かなあ、ニートの俺がしてくれればいいが。
自分で自分を信じなくてどうするって思うが、過去の自分に逆戻りするのである。
気づいたら病院のベッドに寝ていた。
そうだ、あのクソガキはサンドイッチになっている可能性がある。俺は左手の指が痺れてるくらいで、これは元々だし特に問題はなさそうだ。
ナースコールを押すとすぐに看護師さんが来てくれた。
説明を聞くに俺は1日程昏睡していたらしい。意識ははっきりしてるし記憶障害もなく。精密検査もばっちりだった。ちょっと血圧が高いと言われたくらいである。
スリップした一番後ろの乗用車が最初に衝突した為、その人から賠償を貰った。俺はウキウキであるが、母さんはあまり喜んではいなかった。
「盗ラブどうだった?」
「うーん、なんか微妙だったかも」
「どんなところが?」
「主人公が強すぎてつまらなかった」
そんな他愛のない話をしながら、平和な時間が戻ったのだと思ってSNSを見ると一通、ウドンXさんからメッセージが来ていた。
オフ、しかも2人きりで会いたいという物だった。テンション上がってしまう。
理容室に行ってキレイにしてもらい。シアターにリビングとカウンターキッチン付きのメゾネットで会っちゃうんだ。えへへ。
お風呂とかでばったりしちゃってキャーって!なるんだろうか。楽しみである。
大問題発生だ。遅刻してしまった。
俺は割と方向音痴で迷いやすいんだよなあ。ゲームみたいにミニマップ表示してくれたらいいのに。
迷って遅れますと連絡すると、『一旦駅の入り口に戻ってください』という指令がウドンX少尉から届く。アイス二等兵了解であります!
超ウッキウキで待っていると、白いブラウスに黒いキャミソールドレスを着たウドンXさんが到着した。めちゃくちゃかわいいじゃないか!
服の裾には金のきらびやかな刺繍が縫ってあってめっちゃオシャレだ。
「初めまして!絵里です」
「柚希です」
握手をすると、絵里さんの手は少し冷たかった。
外で待たせ過ぎたな。
いきなり部屋にはいるってのもどうかと思った俺は……。
「部屋行く前に映画でも観ませんか?」
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