鈴島林檎

第11話 小説家という夢

☆藪本英二(やぶもとえいじ)サイド☆


りんから告白された挙句にそのままキスをされた。

俺は心臓をバクバクさせながら高鳴る胸の内を秘めながら翌日を迎える。

何というか何でこんな俺を好きになるんだみんな。

ありえない。

だって俺はそんなに良い奴じゃない。


「...」


そんな事を考えながら学校に登校する為に準備をする。

それから俺はりんとすずを見る。

りんは俺を見てから赤くなってそっぽを向く。

すずはそれを「?」を浮かべて見ていた。


そして俺は「日直があるから早めに出るからな」と挨拶をしてからそのまま2人から「うん」と返事を受けてそのまま出た。

そうしてから俺は固まる。


「...お前」

「...英二」


英二と呼ぶその女子。

鈴島林檎だった。

律儀な感じで立っている。

俺は「どうしたんだ」と視線を迷わせながら言う。

すると鈴島は頷いた。


「謝りたくて」

「...何を謝るんだ」

「カウンセリングを受けて私は...何だか身が軽くなった」

「...ああ」

「...それで私のしている行動が異常じゃないかって思い始めた」

「...」


だから私は相手の男性もそうだけど貴方とも別れた。

そう言いながら鈴島は歩き出す。

俺はそれを追う様に歩き出す。

それから鈴島を見る。


「...だけどお前のやった事は暫くは拭えない。...人を不幸にしたからな」

「うん。英二にも申し訳ない事をしたって思う。...だから私は暫くは誰とも付き合わない事にする。まあ状態がこんな感じだからそう言っても仕方が無いけど」

「いや。そんな事はない。俺はお前を応援する」

「英二?」

「お前が決めたんならそれを多少は応援する」


鈴島は「そう」と返事をしながら自嘲する。

それから鈴島は額に手を添えながら「私は何をしていたんだろうね」と言葉を発しながら目線を前に向ける。

俺はその言葉に顎に手を添える。


「お前は洗脳されていた。だからこそ分からなかったんじゃないか」

「まあそうだけどね。...だけど洗脳されていたのは言いわけだから」

「言いわけじゃ無い。それから逃れる方が厳しいだろ」

「...そうかな。私は甘えだって思うけど」

「俺はそうは思わないな。甘えじゃないと思う」

「...」


その言葉に立ち止まる鈴島。

それから公園の方を見る。

そして鈴島は「ねえ。英二。一緒にブランコで遊ばない?」と言ってくる。

俺は「!」と思いながら「時間が無いから少しだけだぞ」答える。


「....有難う。英二。少しだけでも昔に戻れたらなって思って」

「...そうか」

「...私の黒歴史を打ち換えたいから」

「分かった」


それから鈴島はブランコに乗る。

そして漕ぎ始めた。

するとブランコは風を切って動き始める。

俺はその姿を見ながら目の前にある遊具を見た。


「私ね」

「...ああ」

「夢が出来た」

「夢?どういう夢だ」

「小説家になる」

「...何故だ?」

「エッセイを書こうって思って」

「今回の事件のエッセイか」

「そうだね」


それから鈴島は思いっきり漕いでからそのまま飛ぶ。

そして着地してから俺を見てくる。

俺も漕いでみた。

そうしてから鈴島を見る。

鈴島は少しだけ控えめな笑みを浮かべて「私は小説家になって。いつか見返そうって思って」と言ってきた。


「...いい夢じゃないか」

「有難う。英二」

「...なら俺はお前を応援する」

「...英二...」


そして俺も着地してから「んじゃまあ。俺は行くぞ。日直あるしな」と言う。

それから手を振りながら行くと鈴島が「英二」と言葉を発した。

俺は鈴島に向く。

すると鈴島は胸に手を添えていた。


「有難う。英二」

「全てお前の頑張りのお陰だろ。俺は何もしてない」

「...それでも私は嬉しい」

「...そうか。分かった。頑張れよ鈴島」

「そうだね。頑張るよ」


そうして俺は前を見てから少しだけ笑みを浮かべてからそのまま急いで学校に登校すると...日直の星が居た。

星は箒と塵取りで教室を掃除しており。

日直の俺を見てからビクッとする。


「や、やあ」

「...お、おう。...元気か」

「元気だよ。...おや?君は何だか晴れやかな顔をしているね」

「まあな。ちょっと良さげな事があってな」

「...良さげな事?それは?」

「今は説明しづらい。だけど後でまたきっかけがあったら説明する」


星はキョトンとしながら俺を見てくる。

俺はその星を見ながら「で?何をしているんだ?」と聞いてみる。

すると星は笑みを浮かべながら「みんなが使いやすい様に掃除をしているのさ」と答えてくる。

俺はその言葉に同じ様に口角を上げて笑みを浮かべる。


「...今日は君と一緒なのが嬉しいな」

「...そ、そうですか」

「す、すまないがこの前の事は忘れてくれるかな」

「...あ、そ、そうだな」


あの保健室の襲撃の件ですね。

思い出しながら俺は真っ赤になる。

それから赤面しつつ箒を取り出して掃除を始めた。

正直学校であれはいかんよな...。

今思い出しても顔から火が出そうだ。


り、りんの件もそうだけど。

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