第8話 温かいほうじ茶
☆藪本英二(やぶもとえいじ)サイド☆
そのニュースを観て驚愕していた。
どんなニュースかと言えば鈴島の母親が息子に暴行されて殺害された事件だ。
鈴島生頼容疑者という奴。
多分だが鈴島の兄と思われるが。
「お兄。...これは...」
「正直こんな事は許されないな。最低最悪だ」
「...だよね。お兄ちゃん」
そんな感じで俺達はニュースを観ていたが次に始まったのは政治の選挙のニュースだった。
下らないと思い俺はテレビを消す。
するとりんが「アニメ観ない?」と俺達に提案してきた。
俺はすずを見る。
「すず。どんなのが良い」
「私はお兄が好きなものが良い」
「...そうか。じゃあ...俺はラブコメが好きなんだが」
「じゃあそれで良い」
「...そうか?」
そして俺達はあくまでえっちなシーンが出ない様なラブコメを観てみる。
それはとても楽しいラブコメだった。
しかしまぁアマ〇ンプライムって便利だなやっぱ。
色々な物が探せるから。
「...でもすず変わったね。いつもなら知的なものをって言うじゃん」
「...そうだね。...私、お兄が好きだから」
「...は?」
「お兄に告白した」
「...は、へ?」
俺は慌てて「すず!?」と言う。
りんはショックを受けた様な感じでリモコンを落とす。
それから「そ、そっか」と笑みを浮かべる。
俺はその姿を見ていると。
「...私だってお兄ちゃんが好きなのに」
と呟いた。
それから駆け出してからそのままドアを開けて外に出て行った。
俺は「りん!どこにいくんだ!!!!!」と言ったが答えなかった。
何だよ一体!?
「クソ!すまないすず!追いかけるから!」
「うん」
「...アイツも俺が好きなのか」
「...うん。でも自分は脳が馬鹿だから彼のものにはならないって言っていた」
「何を言ってんだアイツ。馬鹿野郎か!!!!!」
俺はダッシュで駆け出す。
それからドアを開けて飛び出す。
そして薄暗い箱庭を駆け出す。
息を切らして駆け出してから数分して公園にりんの姿を見掛けた。
「何をしているんだ」
「お兄ちゃん...」
「...お前も俺が好きなんだな」
「...当たり前じゃん。だってお兄ちゃんは私の...」
「確かに俺はりんとすずを救ったな」
「...そう。だからあの時から好きだよ」
ベンチに腰掛けているりんの横に腰掛ける。
それから背もたれに手を添えて息を空に吐いた。
そして数秒してから「りん。俺はお前は馬鹿って思って無い」と告げる。
りんは「え?」と反応する。
「お前の努力は誰にも負けない。...俺を好きって言ってくれて嬉しかった」
「...でもまあ無理だよね。私は...天才なみんなには勝てない」
「本気でそう思っているのか」
「...だって私、成績が」
「そんなもん所詮は紙切れだ」
俺はりんを見つめる。
りんの手を握った。
それから「努力は結晶化する。だからお前の努力は無駄じゃない。お前は馬鹿じゃない。それを言っちまうと俺が寂しくなる」と言いながら俺はりんを見た。
笑みを浮かべながらだ。
「成績が何だって?人間は得意不得意があって当然の生き物。スーパーコンピューターじゃないんだ。そんな完璧を目指してどうするんだ?」
「...私はお姉ちゃんだから」
「お姉ちゃんだから?だから何だ?...お前の事をすずは嫌っているか?違うよな?すずはお前を有能な姉として認識しているよ。彼女の瞳を見れば分かる」
「...」
りんは涙を浮かべて震え始める。
それから「私はお兄ちゃんが好き。だけど...。でも確かにね。お兄ちゃんの言っている事。説得力がある」と言葉に詰まりながら話す。
俺はその言葉に頷く。
「...帰ろう。お前は家族なんだ。みんな心配する」
「...お兄ちゃんは本当にお兄ちゃんだね。私、お兄ちゃんを好きで良かったって思う」
「...俺の事を好きになっても仕方が無いと思うが...でもお前達が好きって言うならそれは受け止める。考えるよ」
「お兄ちゃん。有難う」
そう言いながらようやっと立ち上がったりんは涙を拭きながら俺の手を握る。
それから頷いてくれた。
お姫様と王子様の様な感じだったが。
まあ言わないでおこう。
☆
家に帰るとすずがりんを思いっきり抱き締めた。
それから「お姉ちゃんのあほ」と思いっきり泣き始めるすず。
俺はその姿を見ながら抱き合う2人を見た。
そうしてから俺は笑みを浮かべながら「お茶でも飲むか」と聞いてみる。
「うん。お兄」
「じゃあお願い。お兄ちゃん」
「ああ」
それから俺は温かいお茶を淹れ始める。
ほうじ茶の温かいのだ。
これで身も心も温まりたいものだな。
そう考えながら俺はお茶を急須で淹れているとこんな声がした。
「お姉ちゃんはどうしてこの場から逃げたの」
「...すずは馬鹿なお姉ちゃんは嫌いでしょ?」
「...そんな事一言も言ってない。...何でそんな事言うの?訳が分からない。心配した。ありえないぐらいに。お姉ちゃんは優秀。馬鹿じゃない」
そしてまた2人は抱き合う。
(本当に最高の姉妹だな)と思いながら俺は湯呑にほうじ茶を注いでからリビングに戻った。
それから俺は「ほれ」と2人にほうじ茶を差し出した。
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