第7話 禍

☆鈴島林檎(すずしまりんご)サイド☆


私がやっているのはそれほど悪い事か良く分からない。

私は2つ愛しているから良いんじゃないだろうか?

片方に愛を注いでいる訳じゃない。

私は2人とも愛している。


だがその事に英二は反発した。

それから「私と別れたい」とまで言ってきた。

私は何故そうなるのか分からない。

思いながら私は家に帰って来た、と同時に頭に固いものが飛んできた。

それが命中して私は額が切れて出血する。


「遅いんだよ!何をしていたんだ!!!!!」


私はプラスチックの鉛筆立てを飛ばしてきた兄を見る。

兄の...鈴島生頼(すずしまおうらい)を。

そして「ごめんなさい」と謝る。

すると奥から母親が「大丈夫?!」と言ってくる。

だが母親は生頼が突き飛ばした。


一見するとこれはまともじゃ無いかも知れないが私にとってはまともだと思い始めた気がする。

何だか行政からは(DV)と言われているが。

そんな事は無いんじゃないかって思う。

多少は兄は暴力的だけど。


「テメェババア!飯をとっとと作れ!」

「は、はい」


兄は良い人だと思う。

仮にも私達を命令させて纏めているから。

だからこそ私は兄を信頼している。


だが。


何かおかしいのかこれが?

私は英二の事でショックだった。

それから考えていると今度は私が突き飛ばされた。

柱に頭をぶつけて出血する。


「ボーッと突っ立ってんならなんかしろよお前さ。金が無いんだっての。...正直鬱陶しいんだわ。金稼げよ」

「...はい。バイトに行って来ます」

「パチンコ代も結構いるんだからな?」

「分かりました」


そして私は生頼の指示に従って家から出た。

それから私はバイトに向かう。

バイト先は...ファーストフード店だ。

そこで金を稼いで生頼に貢いでいるのだ。

逆らったら殺されるので。


「...」


私は制服に着替えて準備をしながら今日も笑顔を見せながらバイトをする。

それからお金を稼いでから生頼の為になる様にしなければ。

そう思いながら私は仮初の笑顔で動き始めた。



家に帰って来たら母親が兄から制裁を受けていた。

どうも何か逆らったらしい。

私はその姿を見ながら生頼の機嫌を取る為にお金を渡した。

今日は給料日だったから。


「おお。やればできるじゃねーか。ならパチンコ行ってくるから」

「はい。お兄」


それから高笑いしてから機嫌良く生頼は出て行く。

私はその姿を見送ってからお母さんを見る。

お母さんはえづいている。

正直息が苦しそうに見えるが。

まあいつもの事だ。


「...さて。そんな事より」


私は生頼が去ったので勉強する事にした。

それから勉強をしているとドサッと音がした。

私は「何の音だ」と呟きながらそのままドアを開ける。


すると母親が倒れていた。

息が苦しそうだ。

救急車を呼ぶべきか?


「駄目よ。生頼の為にならないから」

「...でもお母さん。このままじゃ死んじゃうよ?」

「...死なないわ。大丈夫。だから呼ばないで」

「...でも...」

「良いから呼ばないで」


そう言いながらお母さんは立ち上がる。

あざだらけの身体を動かしながら食事を準備する。

どうもいつもより様子がおかしい。

肋骨を骨折しているのかもしれない感じがした。

だけど呼ぶなって言ったから...。


「このまま死んでしまっても良いけど生頼の為にならないから。...どっちに転んでも生頼の為にならないわ。だから自力で治すわ」

「...そう。それなら良いけど」

「...ふふ」


母親は食事を用意する。

それから私はその様子を見ながら部屋に戻った。

そして勉強をし始める。

その夜の事だった。


生頼はパチンコに負けて暴力を加速させて激高した。

それから母親を金属バットで暴力を振るい全てを滅茶苦茶にし始めた。

だがやがて生頼は「息してないぞコイツ」とか言い出した。

見ると母親は冷たくなっていた。

私は驚きながら救急車を呼ぶ。


その結果だが母親は肋骨が折れて鎖骨が折れていた。

息が出来なかったらしくそのまま翌日、死亡した。

そしてそれと芋づる式に生頼が母親への暴行容疑で捕まった。

(何故捕まったのか分からない)と思っていたのだが。

私に専門士が付いたのだが。



「...お兄さんから暴力を振るわれていたのはいつから?」

「...そんなの話す必要性有りますか?」

「...そうだね。話す事によって気楽になるかもよ」


私は病院でカウンセリングを受ける。

その中で私が異常だったという事が言われ始めた。

母親が死んで気が付くとはだが。

私はカウンセラーの清水を見つめる。


「...貴方は心の全てが粉砕されているわ。...カウンセリングがいる。ラポール。...徐々に私と関係を築きましょう」

「...何故ですか?」

「...死ぬわ。貴方が」

「...?...私は死にませんよ?」

「貴方が死ななくても心が死んでいる。...だから何とかするわ」


変な事を言う。

思いつつ私の脳内で再生されたのは英二の言葉。

「お前は異常だ」という言葉。

私は溜息を吐いた。

やりたくも無いが仕方が無い。


「分かりました。じゃあお願いします」


私は変われるだろうか。

そんな事を思いながら私は窓から外を見る。

そして変わるとしても何が変わるか分からないんだが。

思いながら私は考えてみた。

だけどやっぱり分からなかった。

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