第4話 駒を進める時

鈴島が俺の知り合いの手により制裁を受けた。

それを仕組んだのは星という女子だ。

いつも名探偵の様な感じで居る友人の少女。

でも今回は有難かった。

むかむかしていたので丁度良かったと思う。


それを思いながら俺は窓から外を見る。

そうしていると「ねえねえ」と声がした。

俺に話し掛けている様だ。

顔を上げてみるとそこに...たしか田中千歳(たなかちとせ)だったか。

クラス委員の少女が居た。


「何だ?」

「うん。もしかして園島さんって藪本くんの事好きなの?」

「ぶはぁ!!!!!」


田中の言葉に噴き出す俺。

何でそんな噂が!?

そんな訳が無い。

そもそも俺は振ったつもりである為。

星と付き合う余裕はない。


「何だかいつも仲が良いからさ。気になっちゃったの」

「...勘違いをしている様だが俺と星はそんな仲じゃない。腐れ縁だ」

「そうなの?面白く無いなぁ」


いやいや面白く無いってそれは。

俺は苦笑い。

するとそんな田中と俺に「待って待って。それは冗談だよ」と言いながら周りの女子達がきゃいきゃい言いながら俺の席にやって来る。


「絶対に何かあるよ」

「それは確かにね」

「それ思った」


女子達はきゃいきゃいなりながらそう言ってくる。

俺はその事に再び苦笑いで制止しながら見る。

すると当の本人が帰って来た。

噂の中の人だ。


「やあやあ。何を話しているのかね」

「...好きな人の話だ」

「...え?...あ、そ、そうかね」


すると女子達は顔を見合わせた。

それからニヤッとする。

「ねえねえ。園島さん」と言葉を発した。

そうしてから「藪本くんね。調子が悪いんだって」と言った。


「...へ?」

「え?そ、そうなのかい?」

「そうそう。だから保健室に連れて行ってあげて」

「...そ、そうか。それなら仕方が無いなぁ」


そして星は俺に対してまんざらでもない感じで向いて来る。

「さ、さあ。行こうか」と言いながらだ。

いや待て俺は何処も調子は悪く無いんだが!?

俺は慌てて田中を見る。

だが田中は手を振りながら女子達とキャーキャー言っている。


「ちょ、調子が悪い時は言ってくれたまえ」

「待て。俺は大丈夫だぞ」

「...そうかい?でも顔が...赤い気がする」


俺の手を引きながら前を向いている星の耳が滅茶苦茶赤い。

まさか?これ本当にか?

だけどありえないだろこんなポンコツな俺を愛するとか。

本気のガチでありえなさすぎる。


「...星」

「な、何かね」

「いや。何でもない」


それから俺達は保健室にやって来る。

だがその場に先生は居なかった。

今は出掛けているという表記があった。

仕方が無い。


「...まあ戻るか。星」

「そうだな。帰らない」

「...何を言っている!?」

「...わ、私は」


そして星は何を思ったのか保健室に俺を連れ込んで鍵を掛けた。

それから真っ赤になって俺に向いてくる。

な、何だ。

何をしている...!?


「あ、あはは。これで帰れないね。君も」

「おい。冗談は止めろ。何をしている!?」

「...君を襲ったらどうなるのかな」

「...ど、どういう意味だ」


言いながら何を思ったのか星はその場でブレザーを脱ぐ。

それからしゅるっという感じでネクタイも取ってしまう...は、は!?

俺は赤面しながらその姿を見つめる。

何が起こっている!?


「わ、私はね。生理学的に君に興味があるんだ。今までは駄目だったけど今ならいけるだろう」

「生理学的...!?お前は何を言っている!?」

「私は君が好きだ」

「...そ、んな馬鹿な!?」

「本当だ。私は君と出会ってから今までで好きになった。だからこそ私は君を...君に最大のアピールをと思う」


そして俺をカーテン間際まで追い込む。

それからカーテンを閉めて俺を押し倒してきた。

ベレー帽がぱふっと俺の横に落ちた。

だがそんな事すらも気にせず俺をジッと見る。

ふわっと女の子の香りがする。


「ま、待て。引き返せ!お前が...お前の気持ちは分かった」

「女子はね。人を大好きになったら独占したくなるものなのだよ。ワトソン君」

「...!?!?!」

「だからこそ私は君を独占するには良い機会かと思ってね」

「...待て。ホームズ。俺は...そんな気にならない!」

「...じゃあその気にさせてやろう」


そして何を考えているのか星は俺の手を自らの胸に添えた。

その事に俺は真っ赤になってから心臓をバクバクさせる。

それから俺は勢い良く起き上がる。

星を押し倒す形になる。


「...駄目だ」

「...な、何がかね?」

「お前は...怖いのかなんなのか泣いているじゃないか」

「...え?」


俺は星から退いてから見る。

星は涙を浮かべて泣いていた。

「これは」と言いながら慌てる。

俺は苦笑しながら星の頭に手を添える。


「...気持ちは嬉しい。だけど今はそういう事をする気分じゃない」

「...」

「だけど仮にもお前が好きっていう気持ちは受け取るよ。有難うな」

「...ワトソン...」


そう言いながら起き上がると鍵がガチャッと開いた。

それから保健室の先生の横水先生が「あら?貴方達...」と言ってから星の姿を見てから赤面した。

「ま、まさか」と言いながら慌てている。

誤解です。

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