ニート、ダンジョンを作る
一通り説明を受けたが、意外と直感的に操作できるみたいだ。
スマホの画面に触って動かす事によって、実際のダンジョンも同じように変形する。
そうやって好きな形にダンジョンを変化させて、そこに罠やモンスターを配置する。
そして、それには相応のポイントを消費する。
まぁ、良くある小説なんかと同じような感じだった。
「そりゃあ、パクりましたから」
「せめて、リスペクトと言おう」
「事実は事実として認めてしまった方が怒られないんですよ。誤魔化したり、嘘をつくから余計に怒られるんです」
それにしたって、堂々とパクッて良い理由にはならないだろう。
「まぁ、良いじゃないですか。それとも、もっと難解なシステムの方が良かったですか?」
「これで良いです」
何はともあれ、サッサとダンジョンを作っていこう。
ポイントだけは有り余るほどあるので、とりあえず階層を増やしてみる。
階層を増やすには20000ポイント必要なのか。
とりあえず一階層を増やしてみると、目の前に下へと降りる階段が現れた。
スマホを操作すれば、階段の位置も変えられるらしい。
この調子でもう一階層作ろうと思ったが、そこで異変に気が付いた。
「必要なポイントが、40000に増えている……」
「ああ、言い忘れてました。階層は増やす毎に必要ポイントが増えていきますから」
そう言う事は先に言ってほしい。
「だから、言い忘れてたって言ったでしょう」
指摘したら逆ギレされたから、この話はもう止めよう。
しかし、どうしたものか……。
「おや、悩みますか。馬鹿で臆病なハヤトさんの事ですから、迷わず増やすと思ったのに」
だって、そんなことをしたら残り10000ポイントになってしまう。
だとしたら、50000ポイント使って罠やモンスターを召喚した方が安全なんじゃないのか?
「まぁ、そうでしょうね」
尋ねると、意外とあっさり肯定してくれた。
意外だ……。
「私を何だと思ってたんですか。私だって、ハヤトさんがすぐに死んじゃったらつまらな……、悲しいじゃないですか」
今、つまらないって言いかけたか?
「何の事やら、分かりませんねぇ」
そっぽを向いて口笛を吹き始めるリゼルを見て、追及が馬鹿らしくなった。
あと、口笛が妙に上手い。
「それじゃあ、モンスターを召喚しよう」
「ええ、そうしましょう。何を召喚します?」
竜ですか? それとも亜竜ですか?
などと目を輝かせて聞いてくるリゼルを華麗に無視する。
そんな強いモンスター、一匹でポイントが吹き飛んでしまうじゃないか。
「だって、一ダンジョンに一匹は必要じゃないですか」
そんな、洗濯機や冷蔵庫みたいに言うな。
居ないダンジョンの方が多いだろう。
と、ここで俺は大事な説明を聞いていない事に気が付いた。
「そもそも、ここは立地的にどうなんだ? ドラゴンが必要なほど強い侵入者が来たりするのか?」
だとしたら、召喚もやぶさかではない。
「いえ、ただの森の中の洞窟です。近くにギルドのある町はありますけど、来たとしてもせいぜい中級の冒険者ですね」
「じゃ、もしドラゴンなんかを召喚したら」
「それ目当てに、上級や超級の猛者たちが我先にと攻め込んでくるでしょうね」
ちなみにピンキリですが上級は複数人、超級にいたってはソロでドラゴンを狩れるような奴も居ます。
その言葉を聞いて、思わず身震いしてしまう。
だったら、絶対にドラゴンなんて召喚しない。
俺は迷わず、最安値のゴブリン10匹とスライム10匹を召喚した。
合計で2000ポイントが所持ポイントから減ると、目の前にモンスターたちが現れる。
とりあえずゴブリンとスライムにはダンジョンの警備をしてもらおう。
命令を受けたモンスターたちは、そそくさとダンジョンの中に散っていった。
「ところでハヤトさん。畑とか作らないんですか?」
……忘れてた。
一応ポイントでも食料は買えるみたいだけど、それだと高くついてしまう。
リゼルの助言通りに、地下の奥に畑を作る。
食料は余っても問題ないし、盛大に5000ポイント使ってみた。
不思議な力で太陽光を再現してあるらしく、地下でも作物が育つようだ。
まぁ、世話自体は必要なんだが。
「それはモンスターにでも任せましょう。コボルトなんかが、手先が器用で得意ですよ」
リゼルの助言もあって、俺はコボルトを10匹召喚する事にした。
ゴブリンたちと違って少し高いが、その分の働きに期待しておこう。
3000ポイントが消費されて現れたコボルトに畑仕事を頼んで、ダンジョンの構築を続ける。
このままだと一本道のダンジョンも、脇道などを作ってそこに罠を仕掛けた。
罠にも色々と種類があって迷ったが、とりあえず誰にでも効果のありそうな落とし穴と降下天井を中心に仕掛けてみた。
まぁ、これはせいぜい嫌がらせくらいの効果しかないだろうけど。
更に細かく設定を弄っていると、気付いた頃にはポイントが20000を切っていた。
まだ、二階層目にほとんど手を付けていないと言うのに。
「……使いすぎたかもしれない」
「そうですね。ここなんか完全に無駄遣いです」
途中から楽しくなってしまって作った無駄な場所を、リゼルは次々と指摘してくる。
正直、止めて欲しい。
「まぁ、人間なんてそんなもんですよ。じゃあ最後に、ちょっとお高い物でも買いませんか?」
高い物?
「奴隷ですよ。ど・れ・い」
それも男の憧れ、性奴隷。
そう言って両手を広げるリゼルは、今までにない程の満面の笑みだった。
「奴隷は、人道的に……」
「世界の外道まっしぐらのダンジョンマスターが何を言ってんですか。何の為に、ダンジョンマスターの基本スキルに隷属がついてると思ってんだ」
まぁ、そうなんだけど。
「ほらほら、分かったらさっさと注文してください。奴隷はここで買えますよ」
嬉々として説明するリゼルに乗せられてスマホを操作すると、画面に『奴隷購入』の文字が現れる。
そしてその下には、額を打ち込む場所だけが表示されていた。
「これだけ?」
「奴隷は運の勝負ですから。どんなのが来るかは完全ランダムです」
どんな市場だよ。
ネットショッピングでも、サンプル画像ぐらい乗ってるぞ。
「良いじゃないですか。今やサンプルと全然違う商品が届くような時代ですよ」
それ以上、ネットの闇に触れるな。
「闇ってほどの話じゃないでしょ。まぁ、高ければ高いほど良い奴隷が来ますから安心してください。安心と信頼の奴隷市場です」
その言葉じゃ、安心も信頼もできそうにない。
「良いから、さっさと全ポイント突っ込めよ」
……奴隷を買うと、コイツの懐にマージンでも入るのか?
やけに勧めてくる事に不信感を抱きながらも、俺は15000ポイントを入力してみた。
さすがに、少しだけポイントは残しておこう。
「ハヤトさんにしては賢明な判断ですね。それじゃあ、早速購入しましょう」
促されるままに購入ボタンをタッチすると、所持ポイントが一気に減っていった。
やがて残り3000ポイントで減少は止まったが、何も起こらない。
もしかして、詐欺?
「大丈夫ですよ。今は抽選をしてる頃でしょうから、もうすぐ来ます」
奴隷市場にやたらと詳しいリゼルが言うんだから、そうなんだろう。
とりあえず余ったポイントで生活スペースにベッドを置きながら、気長に待つ事にした。
ちなみに、生活スペースはちゃんとダンジョンの最奥に移してあるから問題ない。
これで残りポイントは2000になった。
ベッド、結構高い……。
そうこうしている内に、不意に俺の目の前にいつもの白い光が現れ始めた。
「おお、やっと来ますよ」
いよいよ、来るのか。
そう言えば、良く考えるとこれが俺にとってリゼル以外の初異世界人なるんだな。
……どうか、可愛い子でありますように。
気に入らなかったら、チェンジとかできるのかな?
「無理ですね」
どうか、可愛い子でありますようにっ‼
全身全霊の願いは、どうやら神に届いたらしい。
光が消えて俺の目の前に現れたのは……。
「ここは、どこ?」
金髪碧眼の、とても綺麗な女の子だった。
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